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信念に従い、自分の旗を掲げて自由に生きる

日本を代表する漫画家である松本零士さんと、松本さんが描く作品の世界観から大きく影響を受けたと語る上原健一さん。稀代の漫画家と美容師、その二人の対談から見えてくるものとは?

 

第1回はこちら 「漫画とヘアデザイン、そのクリエイションに影響を与えたもの」

 

第2回はこちら 「ヘアスタイルとキャラクターの奥深い関係」

 

第3回はこちら 「創作の根底に流れる侍スピリットと意地」

 

上原 僕が先生の作品を知ったころ、先生はもうすでに売れっ子の漫画家でしたけれど、過去のお話を聞くといろいろ壮絶な体験をしていらっしゃる。

松本 東京に出てきてからもお金がない時代は続きましたよ。もうね~、半年風呂に入らなかったなんて記憶もあるしね。友人たちと「世界記録だ」なんてバカなこと言い合ってね(笑)。でも、みんなそうだったんですよ。当時の下宿はね。銭湯に行かなければならないけれど、お金がない。そのお金があるならパンでも買って食いたいなというのがあってね。久しぶりに銭湯に行ったら、濡れた床に自分の足跡が黒くペトペトペトって(笑)。でも何も気にしなかったですね。若さっていうのはいいもんで、あれはもう青春の天国ですね。パラダイスです。

上原 僕も東京に出てきたときは3年間は風呂なしの部屋だったんで、わざわざ風呂に入りに行くっていうのは、あまりなかったですね(笑)。

松本 下宿屋のおばあさんがいい人でね。京都出身の漫画家も同じ下宿にいたんですが、下宿代を払えずに質屋に行ったらそれがバレて。「あんた、なんで私に言わないんだ」って。「男子たるもの金がないのは恥ではない」と。下宿があったのは、本郷三丁目で東京大学の脇でしょ。「何何総理大臣も何何博士も」って名立たる人の名前挙げてね。「金がないの恥ではないけれど、女には気をつけろ」って説教してくれていたのを覚えています。おもしろかったですよ、あのころは。よくひと部屋に何人もすし詰めになって、男女入り混じって、みんなで協力し合っていましたね。

上原 いいですね、そういう時代。

松本 一度、やると決めたからには、上京したからには、九州男児たるものね、負けるとわかっていてもやらないといけないときがある。お金がないからとかを言い訳にしないで、とにかくやらなきゃならない。意地のかたまり(笑)。私はね、ハーロックにその思いを託して描いているんですよ。

上原 ドクロの旗を掲げているハーロックはかっこいいですよね。

松本 あのドクロは「骨になっても俺は闘う」という意志のあらわれなんですよ。人を脅かすためのものじゃないんです。勝とうが負けようが、ひどい目に遭おうが、自分の信念に従って、自分の旗を掲げて自由に生きるのがいいんです。

上原 最近、意地のかたまりになっているんじゃないかと反省することもあるんです。でも自分のお店を持って、先生がおっしゃるように自分の旗を立てたわけだから、それをどうにかして守りたい思いもある。

松本 コロコロと自分の信念を曲げる人もいるけれど、断固として自分の信念を貫く人のほうが、その信念の中身がよかろうが悪かろうが尊敬できる。人ってそういうものです。

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