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作法を必要とするカメラ

カメラ好きなら、誰もが憧れる存在である“ライカ”。 今日ここにも、そのドイツブランドの名器をこよなく愛する4名人がそろった。 日本一このブランドを知る人物と言っても過言ではないHobby Izaki氏、ライカ女子代表の松井文氏。 ヘア業界屈指のカメラマニアであるHEAVENS代表の小松敦氏とVeLO/vetica代表の鳥羽直泰氏。 「カメラといえば?」「ライカ!」 その深層が解き明かされる。

第1回目はこちら 「写真を撮ることを選んだ人」

 前回の話では、それぞれのライカ愛が明らかになった。そして話は、ライカで撮ることの面白さへと展開拡大。誕生から1世紀以上を経てもなお、色褪せない特別な存在であり続けるカメラブランドには、撮り手をアーティストにするチカラがある。

小松:“ライカ”って、僕ら世代にとっては特別なんですよ。実際に使うようになって、やっぱり他との違いを感じずにはいられない。松井さん世代の人たちとは、またちょっと違った感覚ですよね、きっと。

松井:私は以前から写真が好きで……とはいえ、最初は写真を撮るのは携帯電話でしたけどね。ですから、実際に自分がちゃんとしたカメラで撮った写真を見たとき、カメラにも意思があるんじゃないのかな? って思ったくらいの衝撃がありました。でも、ライカで撮ったときの衝撃はもっともっとすごかったのを覚えています。ライカで撮った写真は、まさに“別モノ”なんです。

鳥羽:カメラもテクノロジーが進んでいくにつれて「キレイに撮れる」「失敗しないように撮れる」ものになっていくじゃないですか。でも、本当は侘び寂びというか、叙情的な感覚っていうのが写真にはあるんだと思うんです。

小松:それ、言っちゃう?

鳥羽:昔の、フィルムのレンジファインダーのカメラの時代って、それが当たり前だったんですよね。でも、だんだん失敗せずに誰でもただキレイな写真が撮れるようになってしまって。キレイなんだけど情感がない感じに。

Izaki:今、家電量販店のカメラ売り場にカメラが100台並んでいるとしたら、それを端から1台ずつ撮っていっても、1台としてピントがズレる写真って撮れないですよ、きっと。そう、全部ぴったりと合うんです。それって逆の発想で言えば「今となっては、ピントが合っていない写真を撮るのは難しい」ということになるわけですよ。

鳥羽:キレイとか汚いとかじゃなく、もうちょっと雰囲気がもたらすものがあるんです、ライカには。

Izaki:森山大道先生みたいな……。

鳥羽:そうです!

小松:昔の失敗写真の中にはいろんなケースがあった。その中にも「これがエロだ!!!」みたいな、そういう面白さがあるんですよ。でも今は、失敗と成功のボーダーラインがわかりにくい。だから、確かに心情的なものを打ち出すのって逆に感性がないとできない。

鳥羽:スマホで女のコたちが写真アプリに走っているじゃないですか。あれって、たぶんその同じ条件の中で同じキレイな写真ばかり撮れちゃうから、なんとかして雰囲気を出そうと加工して遊んでいるんだと思うんです。でも、ライカで撮ってみたら、即座に「なんじゃこれ!」って、他にない個性を感じると思うんですよね。

 ここで少しライカの歴史についてお話ししておこう。1914年、オスカー・バルナックが開発し、世の写真家たちにまったく新しい視点を与えることになった35㎜のカメラを世に送り出す。まさにそれは、ライカがもたらした写真界での革命だった。以来、洗練された革新的なテクノロジーを産み出し続けている、世界で称賛されるカメラブランドである。

Izaki:それそれ! まさにそれなんですよ! 僕も仕事で何万枚も撮っているけれども、未だに、未だにですよ! 「えっ!? マジでこんなん撮れた?」って驚きがある。そんなカメラだからこそ、僕は使っているんですよ。毎回同じレンズを使って同じ設定で撮っても期待を裏切らない面白さがあるんだよね。そこが他とのいちばんの違い。そういえば、マップカメラの会長が面白い話をしてくれたことがあって……。彼は、キャノン、ニコン、ソニーに関しては、コレクションとしていちばんいいものを1台ずつ持っているとか。でも、新しいものが出ると持っているものを手放して、最新のものとチェンジして常にバージョンアップされたものを手元に置いておくらしいんですよ。これは最新=いいに決まっているという表れだよね。だけど、ライカに関しては、旧タイプも含め全型持っているというんです。

鳥羽:やっぱり、ライカは同じ絵が撮れないカメラですからね。

Izaki:そう。それがライカと他との絶対的な違い。だから、ライカのどの機種にも“古い”という言葉は当てはまらない。古くなるんじゃなくて、まったく別モノが出てくるという考え方が正しいんだよね。「M8で撮るとなんで黒が紫になるんだろう?」とか「音がいい」とか、そういうのでモノクロームも2台持ちしている人が結構多いんですよ。

小松:この間、まさにそういう話になったんだよね。

鳥羽:それも含めて、実は面倒なカメラなんですよね、ライカって。

Izaki:面倒くさい……。

鳥羽:ライカにふれるって、いわば面倒くさい所作をする作業だと思うんです。だから、一般のカメラで撮ると、それまでのプロセスや楽しみを奪われているような気がして。

Izaki:まさにそれですよ。

小松:だからライカQなんかの、液晶には出せない感じが楽しい。再生画像出さない感じもね。

鳥羽:何なんでしょうね。カメラにピントを合わせてもらって撮ったものとは全然違うんですよね。ライカって、パーツを触る指の感覚から勉強しないといけないんでね……。

 Izaki氏たちライカ信者ともいうべきファンは、そんなライカにふれる一連の動作を“作法”と呼ぶのだという。まさに、伝統を誠実にたどる敬愛に満ちた言葉だ。

Izaki:その作法の楽しさを1回知ってしまうと、オートフォーカスのカメラを持っていてもちっとも楽しくないんだよね。

鳥羽:楽しくないです。

Izaki:いや「全然楽しくない」だよね。

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