2021年5月担当 snob emVAmp/玉置明日香
2021.05.03
初めまして。京都の美容室snobの玉置明日香です。
彼女の息遣いを感じるような、そんな写真を最後に残したい。
感覚的な私は、後輩スタッフのカメラマンにそんな注文をしました。
彼女と出会ったのは6年前。まだ高校3年生だった彼女にめちゃくちゃ一目惚れし、必死にアタックしてコンテストに出てもらいました。そこからヘアショー、コンテスト、業界誌撮影など、彼女はいつも私の強引なお願いを聞いてくれて、本当にお世話になりっぱなしでした。
自分からあまりメールをしない彼女ですが、それからは髪を切りたいタイミングで連絡をくれたり、気になって私から連絡したり……。そんな関係が続いていたのですが、タイミングが合わず何となく会わないまま1年という月日が過ぎて行きました。
そんなある日、雑貨屋さんで働く彼女の姿を私の親友が目撃して話しかけると、しばらく会っていなかった私のことを気にかけてくれている、というのです。すぐ彼女にメールをしました。すると、2週間後に上京してしまうという衝撃の報告を受けました。
何となく経ってしまった1年を、ものすごく後悔しました。
二度と会えないわけではないけれど、何だかものすごく胸が痛くなりました。
しかし、生まれてから京都から出たことがなかった彼女が上京することを心から祝福したいという気持ちから、わたしに今できる特別なことは何か、たくさん考えました。
やはり私には
心を込めて髪を切ることしかできない。
そう思い、“東京に行ってしまう前に髪を切らせてほしい”とお願いしました。
すると、“彼氏も一緒にいいですか?”とすぐに返信が。胸が張り裂けそうなくらいうれしかったのを覚えています。彼女からずっと聞いていた大切な彼氏にも会えるなんて。
そうして迎えた当日、何も知らないスタッフも彼女に駆け寄って来て、みんなで思い出話をたくさんしたり、大切な彼氏にも聞いてもらいながら東京での次のステップの話をゆっくりしたり。1年の空白も埋められたような素晴らしい日になりました。
仕上がりをとっても気に入ってくれたふたりが最後に支払いをしてくれようとしたのですが、“私にはこんなことしかできないけど、精一杯の感謝の気持ちです”とお断りしました。
大切な人と、
大切な人の大切な人なので、と。
そして東京に行くまでにまだ数日あると聞いた私は、彼女の京都での最後の思い出を写真に残してあげたいと思い、すかさず“もう1日私にください”とお願いしました。
わがままな私はいつも通り後輩たちに想いを伝え泣きついて、カメラマンとメイクアシスタントをお願いして……(苦笑)。急に頼んでも、ニコニコと休日についてきてくれる後輩がいることが本当に幸せだなぁとしみじみ感じます。心からありがとう。
嘘みたいに真っ青な空と澄んだ空気に包まれた日、彼女が小さい頃よく遊んでいた場所で撮影しました。
『彼女の息遣いを感じるような、そんな撮影にしたい』
その日のテーマはそれだけだったので、彼女の着たい服と彼女を生かす最低限のメイクだけで、髪にはスタイリング剤も付けませんでした。
いろんな想いや空気を感じながら自由に動く彼女は息を呑むくらい美しく、みんなで見惚れたあの瞬間は、一生の思い出になりました。
XXXちゃん、本当にありがとう。言葉では言い表せないほど、感謝の気持ちでいっぱいです。これからもずっと応援しています。
今回はたまたま彼女の旅立ちを写真に残すことができたけれど、本来私たちはヘアを作ることですでに目の前にいるお客様の背中をそっと押したり、寄り添ったりさせてもらっているのではないでしょうか。
そんな大切なこと改めて気づかされた1日に、走り回って全力サポートしてくれた大切なスタッフに、そしてこの思い出をカタチにしてくださったHAIR CATALOG.JPに感謝の気持ちでいっぱいです。
これからもいろんなタイミングや場所で、人の息遣いを感じる撮影がしたい。心からそう思いました。
photo:片山勇馬