NINA 栁澤洸樹さん 編集後記
2022.09.07
長野県上田市。千曲川から流れる清流が、昨日までの空気をまるで洗い流してくれたかのように、上田の朝の空気は心躍るほどに新しい。
霞がかった日本アルプスを背に感じながらすすむ道の先に急に現れたモダンな建物、それが今回取材させていただく栁澤さんが働くサロン、NINAだった。
当初栁澤さんは、東京の美容室で就職活動を行っていたがしっくりくるサロンになかなか巡り会えず、地元で何気なく道を歩いているときにNINAを偶然見つけた。
「こんなサロンが地元にもあるんだ...ここで働いてみたい!」
前日取材時におっしゃっていたことをふと思い出す。そしてその気持ちがなんとなくわかる気がした。それほどにもこのお店の佇まいは存在感がありながらもなぜかこの町に馴染んでいる。
今回のモデルさんは、おしゃれな空気感に合わせてロングヘアから短く切ることになった。
施術が始まると大胆なばっさりカットも躊躇なく切っていく。時おり長さを確認しながらも、迷うことなく切り進めていく様子は一見淡々としているようで、それは髪に対して真摯に向き合っている姿。モデルさんも驚いたり不安げな様子もなく、栁澤さんへの信頼や安心を感じているようだった。多くの会話を重ねなくとも安心を与えている。
そして、なによりも早朝の取材だったにもかかわらず、オーナーさん含めスタッフさん全員がじっとその姿を見守っている姿がとても印象的だった。
入社当初、オーナーさんと二人三脚でお店に立ちながら、同時にたくさんのことを学ばせてもらっていたとおっしゃっていた。
「その当時シャンプーの仕方でお客さまにお叱りをいただいてからは、何度もオーナーに練習台になってもらい練習に付き合ってもらったり、電話対応や接客も頼りなくお客さまに心配をかけてしまうほどだったのでそんなことも全て一から指導してくれました。いつもオーナーの技術や接客を盗もうと背中を見続けていたと思います。」
学びと実践が背中合わせにある環境が故の困難やプレッシャーがあったはずだと思う。
「迷ったら困難な道を選べ」
栁澤さんが信念にしているとおっしゃっていたその言葉を実践してきたからこそ、オーナーさんが見せてくれる景色が険しい道だったとしても「楽しい」にきっと変わっていったのだろう。
ずっとオーナーさんが背中を見せ続けてくれたことで「美容師って楽しい。ずっと続けていきたい!」と栁澤さんは思えた。そして次はきっと栁澤さんの背中が、誰かに希望を与える番になる。アシスタントさん方が同じように栁澤さんをみて、この仕事が楽しいと思ってくれるときがやってくるのだと思う。そうやって想いがつながっていくのだと考えると心が温かくなった。
早朝からだったにもかかわらず温かく向かい入れてくれたスタッフさん方。帰りには、わざわざ「美味しいお蕎麦を持って帰って!」と生麺が買えるお店に連れっていってくださりお土産まで持たせいただいた。最初にこのお店を目にしたときに「おしゃれで存在感がありながらも、なぜかこの町に馴染んでいるな」と感じたのは、みなさんから滲み出る温かさからだったのだと思う。