Devellope. 松田直之さん 編集後記
2022.07.30
仙台は私にとって初めて降り立つ場所だった。
そんな土地に足を踏み入れるときは、いつだって少しの緊張とわくわくを感じさせる。駅前は多くの店が立ち並び賑わっていて、どこにでもある街の風景のようだけれどどこか穏やかで心地が良い。きっと美しい海や山に囲まれた仙台ならではの空気によるものなのだろうと思うと、この土地に根付くものに少し触れた気がして嬉しくなる。
そんな宮城県の中心地に今回取材させていただいた松田さんの働くサロン、Devellope.がある。モデルさんのビフォア写真を撮ろうと外に出たころ、降ったり止んだりしていた雨がちょうど上がりはじめて緊張が安心にも変わっていくような気持ちで撮影がスタートした。
まず松田さんから、「今日のモデルさんは髪の毛で顔を隠しているような印象があるので、それを輪郭が可愛く見えるようなショートスタイルにしようと思っています、前回施術した時に『少しの変わりたい願望』のようなものを感じたので。」という話を聞かせていただいた。施術するのは二度目だと言っていたのに、そこまで内面の気持ちに気付いてどんな髪型が似合うか考えられているということに驚かされてしまった。
施術が始まり、その間の会話に耳をかたむけてみる。
プライベートの話をしながらも、「今はどんなカットをしていてこれは何のためなのか」そんな技術面の話もわかりやすく伝えているようだった。モデルさんが元々髪の量が多くクセがあるのを気にしていて、少なくしたら浮くのではないかと心配していた部分も、「ウルフカットだとこんな良い面があって…」「こういうスタイリング剤をこうやって使えば…」そんな風に一つずつ不安を解消して少しずつ安心や自信を与えているように見えた。カットしている途中で「もっと動きがあった方が似合う」と思ったようでモデルさんは人生初のパーマをかけることにもなったけれど、全く不安な様子もなくむしろワクワクしているようだった。
パーマ後のモデルさんの表情はより明るく、動きのあるショートスタイルがすっと馴染んでいた。勝手に私も安心したような満たされた気持ちになっていた。
松田さんが純粋に「人間観察が好きで…」「技術の理論に興味がある」とおっしゃっていたことを思い出す。ゆっくりしたペースで話をしながらも、頭の中ではたくさんのことを考えている人なんだなと思った。こういうクセがあるな、どうやったらもっと似合う髪型になるかな、どうやってこれを分かりやすく伝えられるかな、もっと喜んでいただきたいな、そんなことを考えながらそしてお客さまにもそれを伝えながら。
取材や撮影をさせていただくときに、「私がお客さまだったら」というイメージで考えてみる。私も気になる髪のクセがあるし、もっとこんな髪型にしてみたいなと思っても何かを理由に声にも出さないこともある。そんな時に、それに気付いて「この髪型してみませんか?ここはこんな方法で…」と松田さんのように、わかりやすくこちらからも質問しやすいような柔らかいペースで、話していただけたら「今よりなんだかもっと、自分らしくになれるかも」と自然な気持ちで感じる、そして素直に向き合ってくれることが嬉しいと思う。
『ここに来て内面ももっと豊かになってくれたら嬉しい』
松田さんならではの、人間に対する観察力と誠意が周りの人をもっと喜ばせたいという気持ちに繋がってくるんだなと思う。美容院に行って『髪の毛が可愛くなるだけでなく、内側もなんとなく晴れやかな気分になれる』ということは単なる楽しい会話ができたり、似合う髪型になれる、それよりもっと深いところに素直に向き合ったり気付いてくれる、それもとても大切な要素なのだろうと思った。