AIMANT 西出大祐さん 編集後記
2023.07.20
取材の前夜は土砂降りの雨が降っていた。梅雨の入りを感じさせるような勢いのある雨。それでも取材当日は、何とか雨は降らず過ごしやすい気候でホッとする。学生が多く行き交う風景。どこか安心できるような朝の時間が流れている。名古屋市天白区の美容室、AIMANT。そこで店長を務める西出さんに取材をさせていただいた。
今回お願いをしたモデルさんは、「もしこういう機会があったら、頼みたいと思っていた方」だと言う。高校の頃の同級生であり、西出さんが美容師になってからはコンテストの衣装制作などで彼女に協力してもらっていた。
「今回は、その恩返しになるような機会になってくれたらいいな…」
そう実際に話していたわけではないけれど、そんな思いが話の節々から滲み出ていた。
ずっと止まらない二人の会話が楽しそうで、“お客さまと美容師”としても、“友人”としても話しやすい間柄なんだろうなというのが伝わってくる。
「頼れて、安心できて、同期のようになんでも言い合える先輩」
「物腰が柔らかく、話しやすい人」
自分はこんな人間でいたいし、このような存在でいられているんじゃないかと思う、と話していた。良いことも、悪いことも全部話せる関係でありたい。「このヘアは似合うけれど、こっちは良くない」とはっきり言ってくれる美容師は、実はそんなにいないんじゃないかと思う。西出さんのそれが厳しい言葉でなく、優しさに感じる理由はなぜだろうか。
実際にお客さまから、以前の施術に対してあまり気に入らなかった、と正直に言われたことがあったそう。その時に、西出さんはそれが逆に考え方を変えるスイッチになって、スタイルを作るときの向き合い方が変わったのである。
「自信があるわけではないけど、頼ってくれるお客さんがいることが嬉しい」
ここでいう「何でも言い合える」というのは、「この人になら何でも言っていい」のような一方的で攻撃的なものではない。西出さんが、相手からの意見を真摯に受け止められたからこそ「良いことも悪いことも言い合える関係」を築けるようになったのだと思う。自分が言葉を受け止める側になった時に、相手を尊重しながらどれだけ自分の中でうまく変換して行くのか。それができると、「思いやり」だと感じてもらえる「言葉」を伝えられるようになるのだと思う。
お店が開店して、続々とお客さんが入ってくる。お客さんが席に着くや否や早々に楽しそうに話をする姿が垣間見えた。西出さんを見ていると、美容師は技術を提供することはもちろん、物腰が柔らかく話しやすい、お客さまを一番に考えられる、ということは本当に美容師そのものの姿なように思えてくる。
これからはさらに西出さんが今まで感じてきた“恩”が、「誰よりも相手を思う」気持ちとともにしっかりと届いていくのだろうなと思う。