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珈琲
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実在する地下鉄駅のあん畜生

2019.03.20

HAIR CATALOG.JPの「LIKE IT!」というコンテンツでARiSE COFFEEを取材してもらったのがおよそ4年前。
*その時の記事はこちら

このたび縁ありましてコラムを書かせていただくことと相成りました。 わずか6坪のコーヒースタンドでコーヒーをサーブしながら送る日常、 そこで感じること思うこと、日々起こる出来事を綴りたいと思います。

「コーヒーで世界を変える!」とか「ここから新しいことを発信する!」と いったような高い志や大儀とは無縁の、そもそもが異端のコーヒー屋でありますゆえ、 コーヒーについてのアカデミックでマニアックな内容を期待せず お付き合いいただけますと幸いです。
ψ(*゚▽゚)ψ(メロイックサイン+白目)

さて、私が居ります清澄白河という街。
東京の東、深川エリア。この小さな街の存在をこの4~5年で各種メディアを通じて知ったり、実際来てみたという方もおられるかと思います。とりわけ「コーヒーの街」という切り口での紹介も多く、今ではコーヒー好きの方々から世界各国のコーヒー関係者まで訪れる街になりました。

かつてより東京都現代美術館が存在感を放っていたものの、それ以外といえば寺と墓と町工場の街でした。自分の前職The Cream of the Crop Coffeeの立ち上げから7年、ARiSE COFFEEを始めたおよそ5年半前から考えても、まったくもって驚きであります。

このコラムも初回ということで、まずは自己紹介的なところからぽつぽつと。

自分のコーヒーのキャリアのスタートは、大正創業の焙煎卸会社の製造部における焙煎担当でありました。専門店向けの卸が主体で日々焙煎機を回しコーヒー豆と向き合うこと10年。世間的にもまだスペシャルティーコーヒーの存在が確立も認知もされておらず、サードウェーブという言葉すら無かった時代でした。

バリスタでもなくコーヒー業界の裏方を出自とする私が転職先のThe Cream of the Crop Coffee清澄白河ファクトリー、通称「犬コーヒー」で日常的にお客さんとフェイストゥフェイスで接することは刺激や楽しいことも多く、それが独立のきっかけのひとつにもなりました。

そして、友人、隣人、かつての同僚、犬コーヒー時代のお客さん、 多くの方々の助力のお陰様をもちまして 2013年9月。ARiSE COFFEE ROASTERSを開業。

清澄白河、平野町の角地に佇むコーヒースタンド併設の焙煎所であり、 「店主の趣味丸出し」の狭小空間が誕生しました。

時は流れ2019年3月現在。かれこれ1年ほど貼られている 東京メトロの駅構内のポスターで自分を見かけた方もいらっしゃるかもしれません。

いつも来てくれるお客さんはもちろん、出身の国内外を問わず新規のお客さんからも 「地下鉄の駅でおまえのポスターを見た」 と実によく言われます。

そして「他の告知ポスターに比べて異色なので目を引いた」とも。

実際にこのポイントサービスの告知ポスターは6~7種ある中で、なるほど、自分だけが一種異様な雰囲気であります。自分以外の方々は全員プロのモデルであり背景がぼかされスッキリとした佇まいなのに対して自分の背景の情報量の多さ、ゴチャゴチャしたある種の「濃さ」が異様さの原因であることは間違いないでしょう。

スケートボード、ヘヴィメタル、アニメ、ゾイド……。
元々自分は物心ついた時から服や持ち物をはじめ言動に至るまで「おれはこれが好きなんだ!!!」と全身全霊で表現しないと気が済まない暑苦しいクソガキだったわけであります。そして、そんなある種厨二的なメンタルを抱えたまま数十歳年を取ったのがまさに今の自分でございます。( ̄人 ̄)

そんな人間が営んでいるコーヒーショップです。 異様な雰囲気になるのは必然であると言えましょう。

動物の骨と禍々しいビジュアルの乾燥植物がぶら下がる焙煎機(使ってないんですよね?とよく言われます。使ってますよ。)、屋号の由来であるブラジルのスラッシュメタルバンドSEPULTURA「ARISE」のポスター。乗り潰す前に乗り換え、グラフィックが消えずに残っているスケートボードデッキ31年分が壁に。ドイツのゴシックメタルバンドLeaves’ Eyesのヴァイキングシップ、サイコパスのドミネーター、NHK天気予報のキャラクター「春ちゃん」のねんどろいど、沖縄や台湾をはじめベトナム、カンボジアで友人が営むコーヒーショップのグッズや、先代のタイ国王ラーマ9世をはじめとしたタイ文化モチーフ、怪談家でもあるお客さんの猥談バーの告知、お客さんがくれたお土産の数々。

さらに最近、何人かのお客さんの強い薦めでやっと映画館に足を運び改めて衝撃を受けた劇場版『Fate/Stay night HF』。興奮と劇中の慟哭のままに鼻息を荒げた自分はセイバーオルタ+黒桜のスケールフィギュアを家から引っ張り出してきて追加。自分が見上げた時にしっくりくる位置(御本尊ポジション)にディスプレイしちゃったりするわけです。

 

改めて文字で書き起こすと我ながら何たる暑苦しさよ。

どこからどう見ても決して「入りやすい店」ではない自覚はありますが、 来てくれる皆さまに私の趣味や傾倒するカルチャーに理解を求めるものではありません。

コーヒーを飲みに、豆を買いに来てくれるまともな方々には 「ゴチャゴチャしたカオスな背景」 程度で目をつぶっていただきつつ、あくまで自分が焙煎、 抽出するコーヒーを楽しんでいただければ嬉しく思います。

そもそも清澄白河がこのような形でフォーカスされ様々な海外メディアにまで取り上げられたり、ここまで多国籍なお客さんが来るなど想像すらしていなかった時からこんなノリでありました。また更に、自分のその元来の性分に加え様々なカルチャーや背景を持つお客さんや友達の影響を私自身が日々リアルタイムで受けるのです。そして、それが楽しい。

これまでも、そしてこれからもそんな毎日が続いてくれることを願いつつ(←死亡フラグ) この街角で焙煎機を回し、コーヒーを抽出させていただきたいと思っております。

当初の来店動機はコーヒーであったはずのお客さんが、平野アライズの店内で目にした耳にした何かをきっかけに、何かに共感したり、様々な体験を語ってくれたり、人や店や場所を紹介してくれたり、見知らぬ楽器を演奏してくれたり、変わった生き物を見せてくれたり。TARI TARI。

たった1杯のコーヒーをきっかけに生まれるコミュニケーションは時に想像もつかない広がりを見せる事があります。

「コーヒーは脇役に回り、期せぬ何かが生じる(arise)」

そこに立ち会うことが、 この風変わりなコーヒーショップを営む最大の楽しさであると日々感じています。 その一部でも実際のエピソードを交えてこの連載コラムの中でご紹介させていただければ、 と思っております。

それでは、また来月。 どうぞよろしくお願いいたします。
ψ(`∇´)ψ(メロイックサイン両手)

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