Joan Baez/Whistle Down The Wind
2019.02.28
Joan Baez
ジョーン・バエズといえば、ビートルズがデビューするちょっと前、1960年代の初頭にアメリカのフォーク・ミュージックの世界で女王的な存在でした。
彼女の澄み切った純粋なソプラノの歌声は多くの音楽ファンを魅了したもので、まだ小学校の高学年だったぼくもロンドンで4曲入りのEP盤を持っていました。デビューした頃のボブ・ディランも、ジョーン・バエズがゲストとして観客に紹介したために注目され始めたと言ってもいいほどです。
真っ黒なロング・ヘアの彼女は美人でもありましたが、スウィンギング・ロンドンの時期を経てロックが主流になると彼女に代表されるスタイルのフォークは次第にちょっと古臭く聞こえてきました。正直なところ長年彼女の音楽を聞いていなかったのですが、数年前、75歳の誕生日を祝う形の特別なコンサートのDVDを見て驚きました。
ニューヨークのカーネギー・ホールで開催されたそのコンサートはポール・サイモンやメイヴィス・ステイプルズをはじめ多くの大物ゲストが登場する豪華なライン・アップでしたが、それよりもめちゃくちゃカッコよく年をとったジョーン・バエズ自身に感心したのです。白くなった髪の毛をスタイリッシュにショート・カットし、低くなった声は若い頃のソプラノ以上に説得力を帯びました。
本人は昔のように高い音が出ないので限界を感じ、去年最後のアルバムとして発表したWhistle Down The Windのタイトル曲はトム・ウェイツの曲です。スタジオ録音とライヴのヴァージョンをぜひ聞いてください。またボブ・ディランの代表曲Blowin’ In The Windも、若き日のジョーンが一人で歌うのと、70年代にディランとのデュエットで歌うのもどうぞ。
Whistle Down The Wind
Blowin’ In The Wind
現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。
著書に『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『ラジオのこちら側』(岩波新書)『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫)、『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)、『猿はマンキ、お金はマニ』(NHK出版)などがある。
2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァルLive Magic(https://www.livemagic.jp/ )のキュレイターを務める。