今回は新人を紹介します
2020.11.25
アメリカにはNHKのような公共放送に一番近い存在にNPR(National Public Radio)というネットワークがあります。各地に地方行政の支援を受けるラジオ局が個別にありますが、それぞれが独自で制作する番組とは別にNPRのニュースやドキュメンタリー番組を放送することもあり、逆にローカルで制作された番組をNPRが全国放送することも。また、NPRは全世界に向けてインタネットで良心的なラジオ番組を配信しています。
その中には、民放では滅多に耳に入らないような音楽が含まれることが多く、あらゆるジャンルのミュージシャンにとってNPRが命綱になることもあります。
また、ラジオ局なのに、NPRの優れた映像企画があります。Tiny Desk Concertといって、ワシントンDCにある本社のオフィス内で様々なミュージシャンがカジュアルに20分前後演奏するという企画で、https://www.npr.org/series/tiny-desk-concerts/ で無数にアーカイヴされています。
誰でも知っているような有名な人も時々出ますが、どちらかといえばもう少し渋い存在の人が多いです。そして年に一度有望な新人を発見するためにコンテストを行います。誰でも自分のヴィデオをことができる、という極めて簡単な仕組みで、その中から選ばれた人はめでたくTiny Deskに登場することになります。
今年の優勝者はニューヨークの新人女性歌手Linda Diazです。
まず、コンテストの審査のために彼女が提出した映像です。曲名は「Green Tea Ice Cream(抹茶アイス)」です。
https://www.youtube.com/watch?v=Ursri8GmlW4
素朴ですが、芸能人然としていない中で歌も上手で、彼女が持っている雰囲気が本当にチャーミングだと思います。
普通だったらそこでワシントンDCに出向くことになりますが、2020年のコロナ禍ではそういうわけにもいかず、メンバーがかなり距離をとりながらニューヨークのビルの屋上で演奏することになったわけです。
https://www.youtube.com/watch?v=MYiP0WO6yzA
「抹茶アイス」は『Magic』(https://lindadiaz.bandcamp.com/album/magic-ep)というミニ・アルバムに収録されていて、そのタイトル曲も紹介しましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=Vbqj4ouV8us
リンダ・ディアスはまだデビューして間もないのでレパートリーもそれほどなく、やはりライヴではカヴァーも歌いますが、なかなか雰囲気のある歌手です。
Latch
Thinkin’ ‘bout you
No Scrubs
これからどんな展開になるかちょっと楽しみな人です。
それにしても厳しい財政事情の中でNPRがTiny Desk Concertを続けている姿は何とも頼もしいものです。多様な音楽のシーンを元気づけるために日本でこんな企画が無理ですかね…。
現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。
著書に『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『ラジオのこちら側』(岩波新書)『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫)、『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)、『猿はマンキ、お金はマニ』(NHK出版)などがある。
2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァルLive Magic(https://www.livemagic.jp/ )のキュレイターを務める。