Sarah Jarosz セーラ・ジャローズ
2020.12.19
Live Magicの2年目(2015年)、知り合いからI'm With Herというユニットを薦められました。普段は個別に活動する3人の女性シンガー・ソングライターが暫定的にグループを組んでいたものですが、彼女たちのライヴ映像を見て一発でブッキングすることを決めました。それだけ3人の演奏とハーモニー・ヴォーカルが素晴らしく、また相性がよかったのです。
その3人はフィドルのセーラ・ワッキンズ、マンドリンやバンジョーのセーラ・ジャローズ、そしてギターのイーファ・オードノヴァンです。今回はセーラ・ジャローズを取り上げますが、まず最初にI'm With Herの最初に出たシングルの2曲を振り返りましょう。 片面がジョン・ハイアットの曲"Crossing Muddy Waters"、そしてもう片面はニーナ・シモーンの歌で知られる "Be My Husband"をアカペラで歌っているものです。
I'm With Her - Crossing Muddy Waters
I'm With Her - Be My Husband
3人のうち、一番若いセーラ・ジャローズは今年で29歳、生まれ育ちはテクサス州オースティンとその近くにある小さな町ウィンバリーです。10歳からマンドリンを習い始め、その後バンジョーとギターも弾くようになり、まだ高校生のうちにデビュー・アルバムを発表しました。しかもその中の曲"Mansineedof"がグラミー賞のカントリー・インストルメンタル部門でノミネイトされました。
Mansineedof
2009年、デビューと同時にセーラはニュー・イングランド音楽院に入学、在学中にもアルバムを出しましたが、2013年に卒業すると本格的に活動に入ります。
2014年には、前回のコラムでも触れたNPRのTiny Desk Concertに登場します。
2016年に発表した4作目のアルバム”Undercurrents”はグラミー賞のフォーク・アルバム部門で受賞、またその中の曲"House Of Mercy"はアメリカン・ルーツ部門で受賞しました。
そして今年、最新作"World On The Ground"が出ました。
18歳で故郷のウィンバリーを離れたセーラはニューヨークを拠点としていますが、今回はそのテクサスの故郷をテーマにした曲が多く、ギターの達人でもあるプロデューサーのジョン・レヴェンサールの力もあって実に素晴らしい作品になっています。
Hometown
Johnny
Orange And Blue
Little Satchel
仕事でナシュヴィルに行っている時にコロナ・ウイルスの影響で移動することができなくなり、しばらくそこに留まっているセーラはコンサートの活動はできませんが、自作の他に彼女の好きな曲のカヴァーを定期的にYouTubeで発表し続けています。
I Still Haven't Found What I'm Looking For
The Way You Look Tonight
Silver Thunderbird
今後も必ず更に伸びる、本物の才能を持った彼女をこのところよく聴いています。
現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。
著書に『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『ラジオのこちら側』(岩波新書)『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫)、『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)、『猿はマンキ、お金はマニ』(NHK出版)などがある。
2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァルLive Magic(https://www.livemagic.jp/ )のキュレイターを務める。