Buika
2019.07.07
ぼくが日本に来た70年代半ばには、ラジオやテレビで流れる歌謡曲などで聞こえてくるエレクトリック・ギターに独特の泣きがあって、カルロス・サンタナというギタリストの影響力を痛感したものです。サンタナのデビューは1969年で、その年に行われたウッドストック・フェスティヴァルでの強烈なラテン・ファンクの演奏でたちまち世界的に話題になりました。その後の50年のキャリアで様々な起伏があり、20年前に若い世代のミュージシャンをゲストに迎えたアルバム「スーパーナチュラル」で久々のヒットを記録しましたが、ぼくは今一つ興味を持てませんでした。個人的にはどうしてもサンタナ自身が若い頃の作品が新鮮に響いたのですが、先日発表された新作「アフリカ・スピークス」はなかなか気に入っています。
Santana - Breaking Down The Door ft. Buika
このアルバムに全面的にヴォーカルで参加しているのはブイカというアフリカ系のスペイン人女性です。今回はアフリカ的なサウンドを目指したいと決めていたサンタナがプロデューサーのリック・ルービンに彼女の名前を伝えて、参加が簡単に決ったそうですが、ある意味意外性のある組み合わせです。
Buika - No Habrá Nadie En El Mundo (Videoclip oficial)
サンタナのデビューの3年後にスペインのマヨルカ島で生まれたブイカ(コンチャ・ブイカとして活動する時期がありましたが、最近は苗字だけを芸名にしています)は2000年にデビューしました。どちらかといえばフラメンコ的な歌い方をする人ですが、R&Bやジャズの影響もあり、強烈なインパクトのある熱いヴォーカルが持ち味です。ライヴでは本当に燃えているような印象です。
ただでさえ熱いカルロスのギターにブイカの歌が重なると「あっちっち」とやけどしそうな瞬間があります。でも、アルバム全体で聞くと彼女の存在が大変効果的に出ている気がします。10日間のレコーディングで何と49曲をすごい勢いで収録し、その大部分はファースト・テイクだったというので相性がそうとうよかったに違いないです。これまで、国際的に活動しているとはいえ、主にヨーロッパで認知されていたブイカは、最近拠点をマイアミに移していたし、このコラボレイションによって彼女のことを注目する人がかなり増えるでしょう。
このアルバムの他に、彼女がスペインのハビエル・リモンというプロデューサーと組んで作った「Mi Niña Lola」もぜひ聞いてみてください。
Javier Limón y Buika en Buenafuente
Buika: NPR Music Tiny Desk Concert
現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。
著書に『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『ラジオのこちら側』(岩波新書)『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫)、『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)、『猿はマンキ、お金はマニ』(NHK出版)などがある。
2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァルLive Magic(https://www.livemagic.jp/ )のキュレイターを務める。