メイヴィス・ステイプルズ Mavis Staples
2019.11.16
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最も好きな歌手の一人がメイヴィス・ステイプルズです。一度ライヴを見て、歌い出した途端に涙が突然流れた経験もありますし、別のライヴの後、あまりにも感動したので勝手にバックステージに行ってハグをさせてもらったことがあります。
そのメイヴィスは今年で80歳になりました。デビューは1950年、彼女が11歳の時です。父親と姉と兄との家族のゴスペル・グループ、ステイプル・シンガーズとして、最初は純然たるゴスペル・ミュージックを歌っていましたが、その雰囲気は非常にブルージーで、後のソウル・ミュージックを十分に想像させるものでした。ポップスと呼ばれたお父さんがマーティン・ルーサー・キング牧師と仲がよく、その関係もあって60年代の公民権運動の時代にはステイプル・シンガーズはプロテスト・ソングも歌うようになったのですが、彼らの黄金期は70年代初頭、ファンキーなバンドを従えたメッセージ性の強いソウル・ミュージックをやっていた頃です。
ディスコの時代になるとステイプル・シンガーズのヒットはなくなり、80年代に活動停止した後メイヴィスはずっとソロの活動を続けます。しかし、今一つパッとしない時期がありました。2000年代に入って、どちらかといえばパンク寄りのレーベル・Anti-と契約してから、再びずしっとくるアルバムを作り始めました。すでに60代になっていた彼女ですが、デビューした頃からの低くて太い歌声が衰えることはなく、安定した充実期に入りました。
ロック・バンドのウィルコのリーダー、ジェフ・トゥウィーディをプロデューサーに迎え、彼がメイヴィスのために書き下ろす曲がぴったりと彼女のスタイルに合って、2017年に出した「If All I Was Was Black」は実に名盤でした。
年と共に体型は変わったものの、ブロンドのオカッパ風の髪型がかわいくて、そのお陰でメイヴィスのイメージは若々しいと思います。
つい先日ノーラ・ジョーンズとの共演の曲「I’ll Be Gone」が発表されました。自分が亡くなった後のことを淡々と歌ったものですが、80歳にもなるとそういったことを少し意識するかも知れません。とても素敵な曲です。
彼女の世代のソウル・シンガーでは最高峰といっていいメイヴィスが、これほど積極的に活動しているのは何とも言えず嬉しいです。
Mavis Staples HPより
https://mavisstaples.com/
現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。
著書に『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『ラジオのこちら側』(岩波新書)『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫)、『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)、『猿はマンキ、お金はマニ』(NHK出版)などがある。
2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァルLive Magic(https://www.livemagic.jp/ )のキュレイターを務める。