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BEAUTY AWAKE

HEARTS スタイリスト 石原慎太郎/SHINTARO ISHIHARA

STYLIST’S VIEW

 22 歳で九州の筑豊から上京した僕は、純粋に「有名になりたい!」と思っていました。そして、そこから15年。普通の美容師ではなかなか経験できない撮影の仕事などもたくさんするようになった今でも、その熱量に変わりはありません。美容師という仕事に就いていて、「もっとうまくなりたい!」「もっと可愛くしたい!」という「もっともっと」という部分がなくなったら、「僕が僕ではない」気がするんです。つまり、「上手」で「可愛く」できなかったら自分が昔めざしていた美容師にはなれないと思っています。
遠回りでも自分で歩き
自分の目で
その景色を見たい。
 美容師を志したころ、僕の髪を切ってくれていた美容師さんが魔法使いに見えました。「こうなりたい!」というフワフワしたイメージを形にしてくれる魔法使い。そんな魔法使いに今の自分がなれているのか?と考えると、まだまだです。想像もしていなかったヘアスタイルを他の美容師さんがデザインしていると「そんな方法があったのか!」と思うし、先輩たちが軽々と美しいデザインを創り出しているのを見ると「クソー」って悔しいし。でも、この悔しさがあるから頑張れるんですよね。
 実は、少し前までは「ナチュラル? 何それ?」って思っていたんですよ(笑)。たとえそれが作り込みすぎだったとしても、自分にしかできないデザインを表現したいと思っていたから。でも最近は、「余計なことをしていたな」と思うこともしばしば。今は、髪が訴えてくることにもっと耳を傾けたいと思っています。「どんな形にするか?」も大切だけれど、髪が落ちたがっているところに行かせてあげて、無理をしていないのがいい。でもそれは、何もしないのではなく、髪の声を丁寧に聞いて初めてわかること。今回のモデルさんをカットするときも、髪の声に耳をすませました。彼女から聞こえる実際の音声にも耳を傾けつつ、髪とも会話をしてデザインしました。
 師匠や先輩たちは、こうするといいよって僕にいろいろ教えてくれます。でも師匠や先輩たちは、それをつかむために自分の足で歩いて自分の目で見て会得してきたはずです。だから僕も、たとえ遠回りの道だったとしても、自分の足を使って歩いて、自分の目で見て、自分のものにしていきたいと思っているんです。あとから「余計なことをしていたな」と思うことがあったとしても、遠回りの道には道の、そこでしか見えない風景があると思うから。

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AFTER THE BEAUTY AWAKE

 カットしていくうちにお客さまがだんだん笑顔になっていく。「似合わせることはできたかな?」って不安がかすめることもあります。でも、そのお客さまが再度来店され、「よかった」って言われたときの笑顔と、その「よかった」の積み重ねが、僕が魔法使いになる素です。「もっともっと」すごい魔法使いのような美容師になるために、魔法の素を受け取るために、僕はこれまでもこれからも、お客さまに真剣に向かい合いたいと思っています。

石原 慎太郎
福岡県出身  Doubleスタイリスト
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