STYLIST’S VIEW
お客さまをおしゃれにしたい! 僕はいつもその思いでヘアサロンにいます。おしゃれにするために自分の技術やセンス、美容師が持てるすべての力を使いたいと思っています。お客さまが新しいヘアデザインをきっかけにおしゃれになる。すると自信が出てくる。そしてさらにおしゃれになりたいと思うようになる。その向上心はお客さまを前進させる。そしてそういう人は周りの人から素敵に見える。だから僕は、とにかくお客さまをおしゃれにしたい! と思っています。
すべてを自分に置き換えて考える
お客さまをおしゃれにしたいと思ってはいても、お客さまが来店される理由はさまざまです。明確に「○○したい」と思っている人もいれば、なんとなく「髪がのびたな〜」と感じて来る人もいる。そして、僕が一番多いのでは?と感じているのは「なんとかしてもらえるんじゃないか?」と漠然と思っている人。「ショートにしたい!」とか「イメチェンしたい」と強く思っているわけでもない。かといって、変わりたくないわけでもない。おしゃれになりたいけれど、どうしたらいいかわからない。でもあのお店の、あの人のところに行けば、なんとかなるんじゃないか……。そんなふうな人が多い。そのような人たちに僕は「ここに来てよかった」「この人にカットしてもらってよかった」と思ってもらいたいと強く思っています。
今回のモデルさんは、映像作家をめざす芸大の4年生。あごのラインがとてもキレイなのに髪が重たく感じられてもったいないと思ったのが第一印象です。そして正面と横顔のイメージが違うのも印象に残りました。もともとは都会的な顔立ちだし、クリエイターなので、他人にもっと洗練された印象を与えてもいい。なのに重たい髪のせいでどこか野暮ったさが漂ってしまっていました。でも僕は、ちょっとしたきっかけで変わるんじゃないのかな?という予感がしたのです。髪を実際に触って手で髪を軽くまとめてみたら、表情が前に出てくる感じがしました。そこで、骨格のラインがキレイに見えるようにトップの長さを生かしたボブにしました。カラーは色を変えるというよりも、やわらかさを演出するためにナチュラルに見えるアッシュ系にしました。
僕は、ヘアデザインをつくるときだけでなく、お客さまがお店にいらっしゃるすべての時間、お客さまが「どういう気持ちか?」を把握することに力を注いでいます。シャンプーからカット、そしてブローをして店を出るまで、だいたい2時間くらいだとして、その2時間をお客さまの気持ちになって組み立てるのです。最初、お客さまが来店するとき、そのお客さまはお店また僕に対して最初はプラスのイメージを持っているはずです。わざわざ選んで来てくださるのだから。でも何かミスマッチがひとつでも起きると、評価はあっという間にマイナスになってしまう。「シャンプーが気持ちよくなかった」「カットがイメージと違った」といった施術に直接関係するものから「なんとなく会話が苦痛に感じられた」とか「店の雰囲気がうるさくて騒がしく感じた」とか。僕は、そのマイナスをできるだけ起こらないようにしたいのです。だからこのお客さまには明るくて元気なアシスタントをつけようとか、このお客さまには話を聞くのが好きな静かなタイプのアシスタントをつけようとか、自分のことだけでなく周りの環境を整えることにも気を配ります。
その推測が正解かどうかはわからないけれど、お客さまの立場をすべて自分に置き換えて考えます。そのうえで置き換えたからといってわかった気にならないことが実は一番大切だと思っています。
その推測が正解かどうかはわからないけれど、お客さまの立場をすべて自分に置き換えて考えます。そのうえで置き換えたからといってわかった気にならないことが実は一番大切だと思っています。
HAIR STYLE
AFTER THE BEAUTY AWAKE
おしゃれにしたいと思っても、そのヘアデザインがいかにも「おしゃれしています!」という感じだと、お客さまがファッションを楽しむ幅を狭めてしまう可能性があります。お客さまの日常には、さまざまなシーンがあって、それぞれに大切にしたいはずだから。僕はこのジュリエッタというヘアサロンがいろいろな生活スタイルに対応できるおしゃれが提供できるお店であり続けたいと思っています。
斉藤進也
ジュリエッタ代表