STYLIST’S VIEW
その人の人生を共有すること
店の名前の「aimant(エマン)」は、フランス語で磁石という意味です。磁石のように、自然と惹きつけることができたらとの願いを込めてつけました。
aimantは、今年でオープン4年目です。最近、やっと店としての形が整ってきたように感じています。しかし、開店当初は、振り返りたくもないような、心細い日々がたくさんありました。
aimantを立ち上げる前、僕は、東海地区で人気を誇るAngelica(アンジェリカ)というお店で美容師をしていました。高校までサッカーひと筋だった僕が、本気で美容師になろうと思ったのは、当時、REMIXという名前だった今のAngelicaのオーナーの作品写真が影響しています。
Angelicaで働いているときは、お客さまも多く、僕自身も美容師としての成長が実感でき、僕を指名して通ってくださるお客さまも年々増えていて、コンテストでも入賞し、作品づくりも充実していて、暇な時間はいっときもありませんでした。
僕はそれまで、人気店の人気美容師という働き方しか知らなかったのです。それが自分の店をオープンしたらどうでしょう。1日に来てくださるお客さまは数えるほどしかいないということが何日もありました。チラシ配りもしました。ポスティングもしました。来てくださったお客さまに紹介を求めたこともあります。それでも、すぐにお客さまが増えるわけではありません。
そして僕は、戦いの場を美容というフィールドに変えました。その後、がむしゃらに走り続けて人気店の美容師として毎日を過ごしていました。
過去には冷静になって自分の夢をあきらめた僕が、お客さまが来ない状況でも、コンテストに入賞できないことがあっても、なぜか美容師を続けることはあきらめきれないでいます。それはきっと、勝ち負けではなく、「自分が必要とされるかどうか?」に自分の物差しが変わったからかもしれません。冷静に考えて、僕より魅力がある美容師さんはたくさんいます(笑)。でも僕を求めてくれる人もいる。
20代のころ、僕は一通の手紙を受け取りました。そこには、可愛くすることにこんなに一生懸命になってくれる人と初めて出会ったこと、新しい自分になれたこと、希望していた就職先から内定がもらえた感謝などが綴られていました。その手紙は僕の心の中の引き出しに、いつも大切にしまってあります。
その手紙を思い出すたびに、僕は気持ちを新たにします。髪を切ることは、勝つとか負けるとかではなく、人生を共有することなのだ、と。
HAIR STYLE
AFTER THE BEAUTY AWAKE
遠方からわざわざ僕やaimantのスタッフを指名して、ここを求めて来てくださる方もいらっしゃいます。本当にありがたいことだと思っています。ただそれと並行して、この名古屋という都市で、名古屋や栄といった繁華街ではない、天白という地で、どのような店のあり方がいいのだろうか。日本最高レベルの技術やセンスはそのままに、地域の方々が集えるような、自然と足が向くような場所にするにはどうしたらいいのだろうか。その両立を今、模索しています。天白でありながら、日本中どこの美容室にも引けを取らないヘアスタイルを提供し続けること。それと同時に地域のニーズにきちんと応えていくこと。
同業者である美容師も惹きつけ、地域のお客さまも惹きつける。aimantという店名に名前負けしないような、そんな店にいつかしたいと思っています。
渡部伸和
aimantオーナースタイリスト
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