STYLIST’S VIEW
“一生をかけて追い求めたい”。美容師という仕事に対する今のまっすぐな気持ちを、最初から持っていたわけではありません。恥ずかしい話ですが、高校時代の僕には進路を決める段階になってもはっきりした目標がなく、友だちに誘われるまま美容室に見学に行き、“カッコよくない?”くらいの気持ちで美容師になりました。そのときは今の自分を想像もしていませんでした。
遠回りして、やっと気づいた
お客さまと向き合うことの大切さ
お客さまと向き合うことの大切さ
転機は、merciに入ったことです。代表の杉川(友洋さん)とはもともと神戸のサロンで一緒に働いていたのですが、僕は3年でそのサロンをやめてしまいました。しんどくなってしまったからです。大型サロンだったのでミーティングなども多く、練習をしたいと思っても思うようにできない。今思えば朝のミーティング前などに工夫してやればよかっただけの話ですが、そのときの僕は気づかなかった。できないことをサロンのせいにし、自分の時間を好きなように使える小さなお店で働きたくてやめてしまいました。それから別のサロンで働き、そこで初めて、やめたお店のスタッフがどれだけ熱意を持って働いていたかということに気づきました。頭の中が幼稚でした。
後悔をしながら毎日を過ごしていたときに、杉川が独立してmerciを立ち上げることを知りました。失礼だとは思いながらも自分の気持ちを抑えられず、“一緒に働かせてもらえませんか”と言いました。杉川は僕を受け入れてくれたのです。それからmerciで起こるすべてのことが刺激的でした。特にのめり込んだのは、コンテストです。こんなにもたくさんのコンテストがあることや頑張ったら有名になれることを初めて知り、有名になりたいという気持ちがあった僕は、コンテスト一直線になりました。
汗水垂らして努力して、賞をいただけるようになったのは挑戦し始めてから2年後、26歳のときです。そのころはただ“楽しい”だけ。賞を取れるようになって調子に乗っていた部分もあると思います。でも10年続けてきた今は、“苦しさ”を感じています。それは、本当の意味での“上手さ”を知ってしまったからかもしれません。パサパサした質感の髪なのになぜかツヤを感じるとか、まっすぐに切りそろえられているのに丸みを感じるとか……。それってどういうことなんだろうと、一線で活躍する人の“上手さ”を目の当たりにし、自分との差を感じてしまうようになったんです。気づけるようになったことは成長の証でもあり、“苦しさ”でもあります。
汗水垂らして努力して、賞をいただけるようになったのは挑戦し始めてから2年後、26歳のときです。そのころはただ“楽しい”だけ。賞を取れるようになって調子に乗っていた部分もあると思います。でも10年続けてきた今は、“苦しさ”を感じています。それは、本当の意味での“上手さ”を知ってしまったからかもしれません。パサパサした質感の髪なのになぜかツヤを感じるとか、まっすぐに切りそろえられているのに丸みを感じるとか……。それってどういうことなんだろうと、一線で活躍する人の“上手さ”を目の当たりにし、自分との差を感じてしまうようになったんです。気づけるようになったことは成長の証でもあり、“苦しさ”でもあります。
コンテストは“逃げ”だった
大切な人が増えていく
それが、美容師としての喜び
大切な人が増えていく
それが、美容師としての喜び
10年間コンテスト、コンテストの毎日で、サロンワーク中でさえ次のコンテストのことで頭がいっぱい。賞を取れればそれでいいと思っていました。そんな状態だったので、いざお客さまを目の前にすると緊張して、要望をうまく汲み取ることができない。お客さまはきれいになりたくて来てくださるのに、僕の提案するヘアスタイルで残念な気持ちにさせてしまうんじゃないかという不安。引き出しも少なく、美容師としての武器もない。サロンワークから目をそらし、自分の弱さから逃げていただけだったのだと思います。それでもコンテストの結果が少しずつ自分の自信になり、へたくそなりに“絶対にかわいくします”という気持ちでサロンワークに取り組めるようになりました。本当の意味でお客さまと向き合うことができるようになったのが今から2、3年前。……遅いですよね。お客さまに対して申し訳なかったという気持ちを忘れてはいけないと思っています。
最近“つくるヘアスタイルが変わったね”と言っていただくこともありますが、それは“美容師の仕事”に対する向き合い方が変わったからかもしれません。今はスタイリストデビューしたころに学生だったお客さまが結婚されて子どもができ、旦那さまを紹介してくださったり、チャイルドカットをしたりする機会も増えました。最近特に涙もろくて、お客さまがお子さまを連れてこられるだけで泣きそうになるんです。ウルウルしているので、お客さまにバレているかもしれません(笑)。でもそうやってお客さまと心を通わせられるようになり、どんどん自分の大切な人が増えていると感じています。
今回のモデルさんともきちんと向き合いライフスタイルや髪の悩みなどを詳しく聞いて、新しい魅力を引き出せるようヘアスタイルを提案しました。彼女は服飾の専門学校で講師をしているおしゃれな女性で、5カ月間伸ばしっぱなしだった髪をショートにしました。顔まわりをマッシュっぽくして個性を出しつつ、印象的な目元がきわだつよう前髪は眉上ラインに。髪のクセを生かして仕上げました。そして地毛が明るく今までカラーをしたことがないと言っていたので、あえて黒髪にしておしゃれ感を出しました。
今回のモデルさんともきちんと向き合いライフスタイルや髪の悩みなどを詳しく聞いて、新しい魅力を引き出せるようヘアスタイルを提案しました。彼女は服飾の専門学校で講師をしているおしゃれな女性で、5カ月間伸ばしっぱなしだった髪をショートにしました。顔まわりをマッシュっぽくして個性を出しつつ、印象的な目元がきわだつよう前髪は眉上ラインに。髪のクセを生かして仕上げました。そして地毛が明るく今までカラーをしたことがないと言っていたので、あえて黒髪にしておしゃれ感を出しました。
HAIR STYLE
AFTER THE BEAUTY AWAKE
“家族”“ファミリー”、そういう言葉が好きです。血のつながった家族だけではなく、merciというお店を通してつながったスタッフやお客さまも自分にとっては大切な存在。ファミリーです。技術で関わることはなくても“こんにちは”や“ありがとうございます”と笑顔を交わすことで、自分の担当するお客さまはもちろん、お店に足を運んでくださるお客さまにも気持ちよく帰ってほしい。そのシンプルな気持ちをずっと持ち続けていたいですね。
小谷 準
merci店長