STYLIST’S VIEW
僕の名前は、阿部 力。「ちから」って珍しい名前ですよね。両親が“世の中の人々の力になってほしい”という願いを込めて名づけてくれました。迷ったときにはそのことを思い出したりと、“力”という名前がいつも僕の根っこにあります。
ありがとうの連鎖を
いっぱいつくりたい
いっぱいつくりたい
美容師になろうと思ったきっかけは、中学時代の職業体験です。両親が料理上手だったので料理人を希望したけれど、すごく人気でジャンケンで負けてしまって……。それで選んだのが、人気のなかった美容師。親に髪を切ってもらっていたので、それまで美容室に行ったこともありませんでした。当時、サッカーの日韓ワールドカップで地元の新潟にベッカムが来て、ソフトモヒカンがすごく流行っていたんです。そのときは、ワックスをめちゃくちゃにつけられて、いらない部分だけをそぎ落とすという斬新なカットを親にしてもらいました。彫刻みたいな感じです。僕もスタイリングが好きだったのでそのヘアを楽しんでいました。当時の僕の美容への興味は、そんな程度。それが職業体験に行ってみたら、そのサロンの男性美容師がすごくかっこよかったんです。顔がかっこいいとかじゃなくて、働いている姿だったり所作だったり。それまでドラマとかで見てきたどの職業の人よりもかっこよくて衝撃を受けて、当時打ち込んでいたバスケットボール選手か美容師か、どっちかになりたいと思いました。
高校生になると、なんとなくバスケは無理だなってわかってきて、美容師への興味が大きくなって。職業体験でお世話になった美容師の方に“僕よりもかっこいい人がいるから、そこに行っておいで”と紹介してもらい、地元のサロンに通うことにしたんです。その方は売り上げも技術も接客も地元ではダントツだったんですが、“俺よりかっこいい美容師なんていくらでもいるから”と原宿の美容室をすすめられました。それでいくつか行ってみたんですけど、かっこいいと思えなくて……。そんなとき、当時つきあっていた彼女の誕生日プレゼントを買いに行った原宿のカリスマショップ店員の女性に“一回行ってみたほうがいいよ”ってすすめられたのがうちのサロンだったんです。直感でその言葉を信じたほうがいいと思ってプレゼントを買ったあと、そのままVeLO(veticaの別ブランド)に行きました。VeLOで働いている人たちはみんなかっこよくて、“ここで働きたい!”と思って新卒の募集をやっているか聞いたら、明日までだって言われて……。マジかよと思って、履歴書をすぐに書きました。それで急遽友だちの家に泊まって徹夜で作品をつくって次の日にVeLOに持っていったんです。そんな感じで、入社までのストーリーはいろいろありましたね。
先輩たちは本当にかっこよくて、お客さまから必要とされている姿が本当に“粋”で。“来ていただいてありがとうございます”で始まり、“切ってくれてありがとうございます”で終わる。そういう関係がいちばんかっこいいですよね。ありがとうと言える人でもありたいし、言われる人でもありたい。それが僕の美容師としての原点です。
先輩たちは本当にかっこよくて、お客さまから必要とされている姿が本当に“粋”で。“来ていただいてありがとうございます”で始まり、“切ってくれてありがとうございます”で終わる。そういう関係がいちばんかっこいいですよね。ありがとうと言える人でもありたいし、言われる人でもありたい。それが僕の美容師としての原点です。
それからスタイリストになるまで7年半。時間がかかりました。人間性のこと、接客のこと、ファッションのこと、相当怒られ、いろいろなことで指導を受けました。今でも忘れられないのは、代表の鳥羽(直泰さん)からの“中途半端にするな”という言葉です。当時の僕は、もちろんサロンで決められたレッスンとかは一生懸命やっていたけれど、それ以上の部分、自分が努力しなきゃいけないことに関しては三日坊主、一週間坊主で放り出してしまっていました。“今、おまえがミスをしようが何をしようがカバーしてやる。だから、おまえの将来のために、今、ちゃんとやれ”って言われました。それがうれしくて……。これから明るい未来しかないんだなって思えて、それを信じて頑張りました。未来のために指導されているというのがわかったら、すべてを受け入れられるようになりましたね。
そこからは自分に厳しく頑張ってきたし、アシスタントのときもJr.スタイリストのときもお客さまの人数が多かったので、デビューしたとたん予約のとれない美容師になれると思っていました。余裕じゃんって。でもいざデビューしてみると全然お客さまが増えなくて、嘘だろ……と。現実の厳しさにぶち当たりました。同じ土俵に立って、改めて先輩たちやまわりの美容師のすごさに気づかされました。いつの間にか勘違いしていたんです。そこからは居ても立ってもいられず、コンテストで入賞する、毎月4本はヘアスタイル撮影をする、後輩の指導をここまでやる、など自分に試練を課してがむしゃらに取り組んできました。それから少しずつですがお客さまも増えてきて、今は成長している実感があります。この前は雑誌の表紙も担当させてていただきました!
仕事をしていてすごく楽しいと思えるのは、あのころ憧れた先輩たちの“ありがとう”を自分も言えるようになったから。そして、お客さまからも言ってもらえるようになったから。これからは、“ありがとうの連鎖”をもっといっぱいつくりたいです。
今回のモデルさんは、大学1年生。大学進学をきっかけにバレエをやめることになり、伸ばしていた髪を切って変わりたい、というご希望でした。素朴な雰囲気から一目置かれるようなかっこいい女性像にしたいなと思い、その第1弾として強すぎないパーマを提案。急に大きな変化をつけるのではなく、その方のペースに寄り添うことを大切にしています。そして魅力的な目と眉に視線がいくように、バングにデザインポイントを置きました。
仕事をしていてすごく楽しいと思えるのは、あのころ憧れた先輩たちの“ありがとう”を自分も言えるようになったから。そして、お客さまからも言ってもらえるようになったから。これからは、“ありがとうの連鎖”をもっといっぱいつくりたいです。
今回のモデルさんは、大学1年生。大学進学をきっかけにバレエをやめることになり、伸ばしていた髪を切って変わりたい、というご希望でした。素朴な雰囲気から一目置かれるようなかっこいい女性像にしたいなと思い、その第1弾として強すぎないパーマを提案。急に大きな変化をつけるのではなく、その方のペースに寄り添うことを大切にしています。そして魅力的な目と眉に視線がいくように、バングにデザインポイントを置きました。
HAIR STYLE
AFTER THE BEAUTY AWAKE
お客さまには、“ヘアスタイルが可愛い”だけではなく、つくり手の“粋”が伝わるようなヘアスタイルを提案したいと思っています。真剣に、でも楽しくやっている。そんな美容師の魅力が伝わってほしいし、ヘアスタイルが変わると自分自身が変われる、ということも知ってほしい。そして、来てくれてありがとうという感謝の気持ちを常に忘れない。強い信念はきっとお客さまに伝わって、ファンになってくれるはず。求められる自分でありたいです。
阿部 力
veticaスタイリスト