STYLIST’S VIEW
snobに入社したのは、専門学校時代にお客として通っていたのがきっかけです。そのときに、誰に切ってもらっても、自分で見てもかわいくなったと思えたのがsnobだけだったから。お店をあとにしてバイトに行く道すがら「めっちゃかわいいって言われるかも」と思ってしまうくらい! でも、いざ自分が美容師になってみると「かわいい」って難しいんです。私なりの答えを見つけるまでにはとても時間がかかりました。
自分と相手と、
心地よい“かわいい”を探す
心地よい“かわいい”を探す
実は、高校3年生まで美容師になろうなんて考えたこともありませんでした。大学受験に際し、進学先を調べてもやりたいことが見つからず……。そんな状態で進学して、卒業したときに何も残らないのではないかと不安になりました。やりたいことは見つからないけれど、漠然と楽しい仕事がしたいというイメージはあって。ふと、通っている美容室の美容師さんが楽しそうだと思い出しました。母から器用だと言われて育ってきたこともあり、美容師になろう! と大きく舵を切り今に至ります。
ところが、いざ入社してみると。自分は器用だと思っていましたが、上には上が大勢いました。先輩には不器用と言われるし、同期にはテストで先を越されるし。ですが、私はそれでも悔しがることなく、「私って不器用なんや」とか「すごいなぁ」と思うタイプでしたね。とはいえ、うまく進むだけではなかったり、毎日が同じ繰り返しだったので、高校生のときにイメージした「楽しい仕事」ではまだありませんでした。
ただ、やめたいと思ったことは一度もなく……、ひとつには当時の先輩が私たちの気持ちを理解し励ましてくれていたから。
「今は楽しくないやろ、でも大丈夫。絶対楽しくなるから」
その言葉がいちばんのモチベーションでした。そして何よりsnobのスタッフが好きだったので、やめて会えなくなるのはイヤだと思っていました。
精密さを求められるウイッグカットも難しかったけれど、技術モデルさんのテストや、デビュー直後にはお客さまへの提案に苦労しました。お客さまを担当させてもらえるようになって4年たちますが、自信を持って提案できるようになったのはこの1年くらい。しばらくは、すすめているつもりでもどこか不安を抱えていました。
ただ、やめたいと思ったことは一度もなく……、ひとつには当時の先輩が私たちの気持ちを理解し励ましてくれていたから。
「今は楽しくないやろ、でも大丈夫。絶対楽しくなるから」
その言葉がいちばんのモチベーションでした。そして何よりsnobのスタッフが好きだったので、やめて会えなくなるのはイヤだと思っていました。
精密さを求められるウイッグカットも難しかったけれど、技術モデルさんのテストや、デビュー直後にはお客さまへの提案に苦労しました。お客さまを担当させてもらえるようになって4年たちますが、自信を持って提案できるようになったのはこの1年くらい。しばらくは、すすめているつもりでもどこか不安を抱えていました。
この不安を乗り越えられたのは、技術コンテストに挑戦するようになったことが大きなきっかけです。最初は出場する先輩のメイク担当として携わっていたのですが、自分もやってみたいと思うようになって。自分で挑戦するようになると、ヘアデザインへの向き合い方が変わりました。
ひとつは、かわいさの“理由”を道筋立てて考えられるようになったこと。自分が出場していなかったときは先輩にメイクを直してと言われても「そうなんや」と思うだけでしたが、自分が挑戦するようになると、先輩が指摘するところと自分の「もっとこうしたほうがかわいい」という点が一致するようになりました
ひとつは、かわいさの“理由”を道筋立てて考えられるようになったこと。自分が出場していなかったときは先輩にメイクを直してと言われても「そうなんや」と思うだけでしたが、自分が挑戦するようになると、先輩が指摘するところと自分の「もっとこうしたほうがかわいい」という点が一致するようになりました
そしてもうひとつは、技術コンテストの作品だとしてもヘアデザインは私だけのものではないと気づいたことです。コンテストで結果が出なかったとき、社長の吉田(隆司さん)から言われた言葉があって。
「コンテストは審査員の方がお客さまやから。自分だけがいいと思うのではなく、審査員の心に刺さるスタイルをと思って考えないとダメや」
「コンテストは審査員の方がお客さまやから。自分だけがいいと思うのではなく、審査員の心に刺さるスタイルをと思って考えないとダメや」
これは単に審査員の好みや傾向に合わせろというのではなく、自分の気分や世界観に共感してもらえる魅せ方をすべきだということだと思います。技術コンテストや撮影は、自分が表現したいものや好きな世界観を自由にデザインできる機会。そんなときでも、ヘアデザインは自分だけのものではなく、“相手”のものなんだと気づきました。サロンワークでお客さまに自信を持って提案をするためには、単に自分のセンスや技術に自信をつけるだけではなく、お客さまに共感してもらうプロセスが何より大切だと思うようになりました。
もともとお客さまのプライベートなことを聞き出すのは躊躇するタイプでしたが、朝の支度の時間やお仕事での制約など、ヘアケアやスタイリングに関して必要なことは聞かなければなりません。思えば、自信がないときはお客さまの表面的なオーダーを聞いているだけで、その奥の気持ちに踏み込めていなかったんですね。そうやって本当にお客さま目線に立って考えてはじめて、顔まわりのデザインなどを変えるときも「絶対に似合いますから大丈夫ですよ」と自信を持って言えるようになりました。
どんな瞬間でもその人がいちばん素敵に見えて、それでいて居心地のいいヘアスタイルを探っていく。それが、今私が自信を持って提案できることです。髪の形そのものを大きく変えるだけではなくて、ちょっとした質感や顔の出方で、その人にもっとフィットして素敵に見えるデザインを探りたい。前髪の切り方でも、幅や長さだけでなく、はらっと顔にかかる量でも雰囲気はがらっと変わったりします。たとえば今回のモデルさんは、もともと何でも似合う方。そういう人に、ガラッとデザインを変えて変身させる提案もアリだとは思うんですが、あえて形を変えずに動きをプラスしました。そのほうが、本人の今のムードを大切に、もっと彼女らしくかわいくなると思ったから。
学生時代のあの日、言葉で説明できないけど何かかわいい! と思いながらサロンをあとにしたあたたかい高揚感。私のお客さまが、同じようにサロンをあとにしてくれていたとしたらうれしいです。
学生時代のあの日、言葉で説明できないけど何かかわいい! と思いながらサロンをあとにしたあたたかい高揚感。私のお客さまが、同じようにサロンをあとにしてくれていたとしたらうれしいです。
HAIR STYLE
AFTER THE BEAUTY AWAKE
先輩が「絶対楽しくなるから」と言ったとおり、楽しく働ける仕事に出会えました。いろいろな先輩の撮影やコンテストの現場についていったこと、それがすべて今の自分をつくっていると実感します。時間はかかったけれどやってよかった。お客さまとして感じた幸せをお客さまに返すのと同じように、先輩に支えてもらった分、次は後輩にそういった「やってよかったこと」を返していけたらと思っています!
畠翠里
snob Eternita 店長