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BEAUTY AWAKE

tender スタイリスト コイヌマ ミホ

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私自身をひと言で表すとどんな人間かな?
取材してもらうにあたって考えてみると、いくつかのキーワードが浮かびました。嘘をつかない。取り繕わない。でも、ちょっとあまのじゃく。人にも嘘をつかないけれど自分にも嘘がつけないので、一緒に働くサロンの仲間、特に先輩にとっては“めんどくさいやつ”だったと思うんです。だから、前提としてオーナーの高田(昌宏さん)をはじめ、前職のサロン時代から、見捨てずに受け止めてくれる先輩がいたからこそ今の私があります。
相手の全部を
受け止められる私でいたい
美容師になる前から、ヘアスタイルには興味がありました。私が中学から高校のころは、アシンメトリーとかV字の前髪とか、エッジィなスタイルが流行していました。形がヘンだったらオシャレ、みたいな。さらに、私はまわりがやっていないことをやってみたい性格で。クラスで流行しているドラマやヒットチューンではなく、古い映画を見あさったり、背伸びして洋楽を聞いたりする学生時代でした。
美容師って学生のころから髪やファッションが好きで個性的な人がなるものというのが世間的なイメージだと思うので、そんな私は普通に見えるかもしれないんですが、実はこの点が美容師としてはひとつの壁であったように思います。
前に勤めたサロンに入社したいと思ったのは、一番厳しそうなところに入社すると決めていたからでした。これも一貫して「あまのじゃく」なのですが、美容学校で人気の有名サロンや流行のサロンに入りたいという願望がまったくなくて。
そこで叩き込まれたのは「良い髪型とは何か」ということ。先ほども言ったように、髪に興味があり、しかも女性美容師ならむずかしくないように思えますが、これが大きな課題でした。
「お客さまがやりづらい髪をつくるのは美容師として“うまい”とはいえない」
先輩は全員口をそろえてこう言うのです。前から見てかわいいだけではダメ。後ろから見ても、横から見てもかわいくなければいけない。家に帰って自分で扱えるスタイルでなければならない。「ヘンなことがオシャレ」全盛期に青春を過ごした私には、むずかしかったです。
特に、自分の好きなものと違うテイストの髪型の場合。自分が好きなテイストのヘアスタイルだと良し悪しがわかるのですが……。先輩が良いというヘアと良くないというヘアを見比べるんですけど、「モデルさんがかわいいからじゃないの?」と思ってしまうこともありました。言われたことを素直に受け入れるのではなく、自分が納得しないと前に進めないタイプなので、苦労しました。
悩んだ末に私が始めたのは、新たな友だちをつくることでした。学生時代の友だちには趣味が合う人しかいなかったので、まわりを見渡すと自分と違うテイストの友人がいないことに気づいたんです。お姉さん系、個性的な子、年上も年下も、積極的に人と知り合うようにしました。そうやって、その人自身を知って好きになると、自分の感性にはない、他人の“かわいい”がわかるようになりました。
“かわいい”は無数にあります。そうやって、十人十色の“かわいい”を人から彫り出すように見つけてきたので、お客さまに対して自分自身も取り繕わないことを大事にしています。
たとえば、「髪乾かさないで寝ちゃった」とか、ちょっとだらしない日常も正直に言っちゃいます。常に正しくケアできる人のほうが私は少ないと思うんです。「あと1分寝たい」とかそういう気持ちがわかるからこそ、オープンに言うことで気持ちに深く入っていけて、一緒にその人だけの“かわいい”をつくっていけるかなって。
ただ、単にオープンなだけではなく、任せたい美容師と思ってもらえるような専門性もとても大事にしています。毛髪科学や技術の理論などを相手にわかりやすく話すのは実は得意。私は自分が納得しないと前に進めないと言いましたが、アシスタント時代は先輩に何か教えてもらうたびに「なんでですか?」って聞いていたんですよ。「なんで?」魔だった(笑)。だから、お客さまにも疑問を持ったままお帰ししたくないという気持ちがありますね。
また、お客さまの本音を引き出すのには、ただ聞いているだけでもダメ。自分の希望とか好きなことを言葉にするのって、むずかしいと思うので。今回のモデルさんも、クセが気になるくらいで最初は特にオーダーはなかったんです。ですが、過去にあまり好きじゃない感じになったスタイルがあったことがわかって、それを除外してデザインを組み立てていきました。イヤなことを聞いて、選択肢を提示してリアクションを見るのは、意識的に気をつけていることですね。
私はカッコつけられないタチで、器用じゃありません。今お話ししたカウンセリング方法ももっと早いうちから戦略的にできる子のほうが今は多いと思うし、そもそも「あまのじゃく」なこだわりがなかったら、もっとラクに“かわいさ”を見つけられていたかもしれない。
でも、今までやってきたことは間違っていなかったと思っています。自分の頑固な部分とかこだわりとかは、遠回りする曲がり角になったかもしれないけれど、そのおかげで私を選んでくれるお客さまや仲間に出会えました。
心から楽しませたいと思える人たちに囲まれて、誰よりも正直に生きられている。だからこそ、その人たちを笑顔にできる自分でいたいし、そのためにも自分が笑っていたいなって。そう思います。

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AFTER THE BEAUTY AWAKE

人が好きで人に選ばれるのが喜びなので、後輩が悩みを話してくれるときも、自分を選んでくれるのはうれしいです。前のお店はたくさんのスタッフがいて、自分だけでなく全員で後輩を育てるような環境だったけれど、tenderは4人でスタートした小さいお店。小さいお店ならではのむずかしさがあったり、つまずいたりすることがあるかもしれませんが……。一緒に働くことを選んでくれたアシスタント2人にも、先輩たちがやってくれたように向き合っていたいな、と。それが、今の一番の目標です。

 

コイヌマ ミホ

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