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PUNKなパン屋の「食職人」が生み出す 口福なひととき

HEAVENSのスタイリストOHYAさんが「LIKE IT!」スポットに選んだのは
東京・代々木八幡の「365日」。そこで今回は、新しいスタイルのベーカリーとして
また食のセレクトショップとして、「365日」を切り盛りし、
パン職人のイメージを打ち破り続けている杉窪章匡さんを訪ね、お話を伺いました。

一口頬張った瞬間に「おいしい」と思わず声が出ちゃう!

 美容専門学生時代はカフェでバイトをし、HEAVENSに入ってからのアシスタント時代は休みの日をフルに使ってパン教室に通うほど、実はカフェやパンが大好き! 今でも時間を見つけては家でパンをこねて焼き、新しいお店がオープンしたと聞けば休みの日に行くのが楽しみなほど、私の生活にはパン&カフェは欠かせません。
 杉窪章匡というパン職人の名は、表参道のデュヌラルテで杉窪さんが働かれていたときからチェックしていたのですが、2年ほど前にご自身がオーナーとなってオープンした代々木八幡の365日を知ってからは、ますます杉窪さんのファンになりました。

 今回、杉窪さんを訪ねたのは、オープンからわずか2年たらず、連日行列ができるパン屋さん、365日。パン屋さんといっても、ただパンだけが陳列棚に並ぶのではなく、6席のカウンターのカフェスペースもあり、野菜やハム、オリーブオイル、お米、キッチン雑貨など、杉窪さんのお眼鏡にかなったものも棚に並び、壁には杉窪さんの蔵書が飾られ、コンパクトなお店の中をさまざまなアイテムが彩っています。
 もちろんメインは、唯一無二のパン! 奥にある厨房では、次々にパンが焼かれていますが、ひっきりなしに訪れるお客さまで、ケースの中のパンはどんどんなくなっていきます。
 そんな活気あふれる365日の店内で、どんな思いでパン作りをしているのか? お店をプロデュースしているのか? など、あれこれお聞きしました。

杉窪章匡
365日オーナーシェフ

両祖父が輪島塗職人という職人家系の血統。自身もパティシエとして職人人生を歩み始め、24歳でシェフパティシェに就任。2000年渡仏。2つ星「ジャマン」、1つ星「ペトロシアン」を経て2002年に帰国。帰国後、数軒のパティスリーやブーランジュリなどでシェフを務める。2013年に独立。2013年9月名古屋「テーラ・テール」、10月福岡「ブルージャム」、12月向ケ丘遊園「セテュヌ ボンニデー」をプロデュースオープン。そして2013年12月12日、自身がオーナーシェフを務める「365日」をオープン。2015年12月には365日から徒歩5分圏内に2店舗目をオープン予定。

 看板の「365日」の下に「食+食?食×食÷食」とありますが、これはどんな意味なのですか?
「食材と食材を合わせることで新しい発見がある。そして、引き算をすることで味わいを引き出す。そこには相乗効果が生まれる。それを大切な人たちと分かち合えたら……と思っています。1年は365日。そのどの1日も大切にして、365日の食の積み重ねが人の心と体をつくっていく。日々の食事の大切さを感じてもらえたらと思っているのです」
 あんぱんを食べて感動したのは初めて! 365日のパンって普通のようでいて普通じゃないですよね?
「そう感じてくださるのは、ウチのパン作りでは、意味のないことを省いているからかもしれませんね。たとえば、今、お話に出たあんぱん。みなさんがよく見かけるのは、表面がツヤっとしていませんか? これは、おいしく見せようと表面に卵液を塗っているからなのです。でもツヤは出るけれど、そのせいでパサつく。しかも卵液って、味はおいしくない(苦笑)。ウチのパンは、見た目にしかならないことはやらないのです。その分、材料や作り方には徹底的にこだわっています。あずきは十勝のオーガニック。通常のパン屋さんって、あんこはあんこ屋さんから仕入れて包んでいるだけのところが多いのですが、ウチでは、豆から厳選してあんこを炊いています。炊くときに、あんこってアクを抜くのですが、アク抜きをするとアクが取れるかわりに旨味も逃げる。だから、アク抜きをしなくていい食材を選んでいるのです」

ウチのパンは、見た目にしかならないことはやらないんです。その分、材料や作り方には徹底的にこだわっています。

 ココアパウダーを練りこんだブリオッシュ生地にショコラガナッシュと小さなボール型のチョコレートがぎっしり入ったクロッカンショコラなんて、まるでパティシエの手がけたケーキのようなパンですよね。
「僕自身がパティシエとしての経験を積んでいることもこのようなパンを作り出す背景にあるかもしれませんが、そもそもパン屋さんとケーキ屋さんを分けていること自体、日本って特殊で、そこにも必然性を感じないんですよね。ケーキ屋さんを覗くと、どこのケーキ屋さんでも似たようなケーキばかりが並んでいる。そしてオリジナリティーを出そうとすると、意味のないデザインを重ねたり、どこか他から持ってきて、とってつけたような感じになっている。パンやケーキの本当のおいしさには、まったく関係のないものになっている感じがするんですよ」

ヘアスタイルだって、髪質がひとりひとり異なりますよね?同じやり方で同じ結果は出ない。パンも同じです。

 杉窪さんのお話を聞いているとヘアデザインを生み出すことに通じるような気がしてきます。
「お客さまに求められていないものをつくるのは意味がない、という点ではパンもお菓子もヘアデザインも同じかもしれませんね。お店は、求められることが大切だと考えています。ウチのパンでいえば、決して僕の自己表現ではないのです。お客さまが求めているもの、そしてまだ見たこともないけれど、出会った瞬間に『あ!コレ!』と思ってもらえたらうれしいなと思ってパンを作っています」
 パンそれぞれが違った魅力を放っているのも、ヘアデザインが人それぞれに違った魅力を持つのと似ているような感じがします。
「そうですね。素材を一緒だと捉えてしまったら間違いです。ヘアスタイルだって、髪質がひとりひとり異なりますよね? 同じやり方で同じ結果は出ない。パンも同じです。クロワッサンとカレーパンでは違うわけです。スタッフ教育も同じ。僕は今、他のお店でドロップアウトしてしまった人を迎え入れているのですが、彼らを見ていると、教える側にスキルがなかっただけなんじゃないかなって思うのです。『経験したことがないからできない』ならば、ウチで経験すればいいだけ。パンを作るのもスタッフを育てるのも面白いですね」

どの道であっても、その道のプロが一部始終、胸を張って一生懸命取り組んでいれば、世界平和は実現する。

 最後に杉窪さんに夢をお伺いすると意外な答えが返ってきました。
「僕は世界平和を目的にしています。よく世界平和のために大きな話をする人がいるけれど、それは話をすり替えているだけ。時代が悪いだの、国が悪いだの、他人が悪いだの……と言う人に限って、自分の目の前のことがしっかりやれていない。どの道であっても、その道のプロが一部始終、胸を張って一生懸命取り組んでいれば、世界平和は実現すると思っているのです。本当においしいパンを作る、お客さまに求められているものをつくる、育ちたいと思っているスタッフを育てる……これからも僕は目の前のことに精いっぱい取り組んでいこうと思っています」

おいしいパンで口福なひとときを体験したければ、ぜひ365日へ!

365日
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-6-12 
TEL:03-6804-7357
営業時間:7:00~19:00
定休日:無休
http://www.365jours.jp/

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