LIKE IT! HAIR CATALOG JP THE ERCOMMENDED vol.12 | at kiln AOYAMA
自分で作る器で
暮らしのシーンを彩る
Doubleのスタイリスト西川綾さんが「LIKE IT!」スポットに選んだのは東京・青山にある陶器を中心とした複合施設、at Kiln AOYAMA。
そこで今回は、実際に陶器づくりを体験しにお店に伺い「美濃焼」について、器について、あれこれお話を聞きました。
日常で使う器を再び見直してみる
大人になると「人からものを教わる」という機会が減るな?と最近、思っていました。もちろん本業の美容師としては、先輩や師匠から技術に関してなど、教えてもらう機会はあるけれど、それ以外のシーンでは教わることがほとんどない。子どものころは、いろいろな人たちにいろいろなことを教わって楽しかったのに……とモヤモヤしていたのです。何か習い事を始めるのもいいかもしれないな、でも仕事が忙しいからなかなか時間をつくれないし、継続して習うようなシステムだと無理だな……とも。
そんなときに見つけたのがat Kiln AOYAMAでした。最初は、ただ食器を売っているお店と思っていたけれど、中に入るとカフェがあって、お店のことを調べてみたら、陶芸体験もできる。これは、教わりたい願望のある私にぴったりだ!と思ったのです。
今回、at Kiln AOYAMAでお話を伺ったのは西川舞さん。店頭に並ぶ食器について、そして自分の手でそれをつくることについて、いろいろお聞きしました。実際に陶芸体験で先生を務めてくださったのは、美大で陶芸を専攻していたという塚田なつみさん。ど素人の私に手取り足取り丁寧に教えてくださいました。
土から作られる陶器には
人の手の温かさが宿る
写真左手前 / 西川 舞
雑貨の企画、インテリアのコーディネートと他業種での経験を経て、岐阜県多治見市にある陶器デザイン会社、アートホームデザインと出会い、青山に陶芸教室『at Kiln AOYAMA』を作るプロジェクトに加わる。人々の暮らしを彩るものを自らの手でつくることにとどまらず、その体験も提供したいと活躍中。
写真左奧 / 塚田 なつみ
美大で陶芸を専攻後、at Kiln AOYAMAに陶芸講師
いに裏づけられた丁寧な指導で生徒からも人気。
美濃焼きの幅広く深い魅力を
みんなで味わう
at Kiln AOYAMAは雑貨屋さんのようでもあり、カフェでもあり、面白いスペースですね。
「そもそもここは、美濃焼の魅力を多くの人々に知ってもらいたいという思いからオープンしました。陶器づくりを学べる教室、そしてカフェ、ギャラリー、ショップと多面的な構成にしています。世界には美濃焼き以外にも素敵な食器がいろいろあるので、陶器のよさを知っていただくためにデザインが可愛いものも店頭に並べていますし、陶芸作家をはじめとするアーティストたちとの交流もあればいいなとギャラリースペースを設けたり、イベントを開催したり。陶器ってどうしてもみなさんの中に、お皿のイメージが強いようで、割れるとか重いと思われているようなので、陶器のアクセサリーなど、軽くて可愛いアイテムも店頭で販売しています」
本当にいろいろなことが体験できるスペースになっているのですね。
「カフェでは、人とのつながりを楽しめたらなと思っています。ドリップコーヒーだけは実はこだわっていて、バリスタ世界大会で2011年から審査員を務める松原大地さんと、国内大会で10年の審査キャリアを持つ平井麗奈さんによるスペシャリティコーヒーなんです。ふらりとカフェに入っていただいて、コーヒーを楽しみながら、器にも関心を持ってもらえたらなと思っています」
陶芸というと、土をこねたり、窯で焼き上げたり、大変そうで興味を持っていても手が出せない気がしていたのですが、ここは初心者でも体験レッスンで始められるところがいいですね。
「お客さまからの要望もあって、いろいろ形を変えながら教室を運営しています。今は、板状の粘土でつくるタタラコースと絵つけ体験をしたい方に向けたビスクコースの2つを体験コースとして用意しています。そのほかにも、大人のワークショップと題して夜7時ごろからスタートする作陶イベントも開催しています。お酒を飲みながら絵つけをしたり、おしゃべりしながら気軽に陶芸が楽しめるんですよ。今日は西川さん、ぜひ陶芸体験をしていってください」
ということで、人生初! タタラコースで陶芸を体験してみたいと思います♪
いざ、陶芸体験START!
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「6種類の器から好きな形を選ぶ」
あらかじめ用意された小皿や小さなボウルなど6種類のサンプルの器の中からつくりたいものを選びます。自分で使うことやプレゼントする相手を思い浮かべながら選ぶのも楽しみのひとつ。
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「仕上がりの色を選ぶ」
仕上がりのサンプルを参考にしながら釉薬の種類を選びます。釉薬とは、素焼きした器の表面にかける薬のこと。釉薬をかけることによって、表面をガラス質が覆われ、小孔がふさがれるので耐水性が増すそう。
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「粘土をカットする」
at Kiln AOYAMAでは初心者でも作陶体験ができるように土をこねたりする作業はすでにされています。用意された土を物差しとワイヤーカットを使って5ミリの厚さにカット。これが器の材料になります。
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「表面をなめらかにする」
ヘラのような道具で、土のプレートの表面をならします。こうすることでカットした土の不安定な表面が締められ仕上がりがきれいになるのだそう。小さな気泡もこの時点でなめらかにします。
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「型板に合わせてカットする」
つくりたい器、それぞれに合った型板を土にのせてカット。あらかじめ余分な部分を落とすことで、このあとの作業が楽に!
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「手ろくろに乗せて成形」
選んだ器の型に、カットした土をかぶせて成形します。カーブのある器のときは、シワが出ないように丁寧に慎重に型に土を沿わせていきます。
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「成形した器の表面をなめらかに」
ガーゼでタオルを包んだバレンのようなもので表面を軽く叩いていきます。こうすることで土の粒子の密度が増すのだそう。まるでファンデーションをスポンジで叩いているような感覚です。
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「器をカットする」
器の縁が水平になるように、まずは手ろくろを回しながら印をつけて、その後、その線に沿ってカット。完成形が見えてきました!
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「縁のギザギザを処理」
器の縁の部分は、食器として使うとき、口があたる部分。ここをなめらかにするために、再度、バレンのような道具を使ってなめらかに。
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「自分好みの模様をつける」
at Kiln AOYAMAには、いろいろなハンコが用意されているので、その中から好きなものを選んで型をつけてもよし、フリーハンドでイニシャルなどを彫ってもよし。模様選びに迷うのも作陶の醍醐味のひとつかも!?
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「型からはずして、底面をつくる」
型からはずした土の器は、安定感が悪いので、縁が水平になるように置いて、軽く器を押さえて底面をつくります。このひと手間で、安定感のある器に早変わり。
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「器の内側に模様づけ」
シンプルな器が好みなら模様をつけなくてもOK! 飾っても可愛く見える器にしたければ、器の内側に模様をつけるのがおすすめ。彫刻刀で器の内側の縁に沿って模様をつけてみました。
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「完成したらコーヒーブレイク」
at Kiln AOYAMAでは、焼成作業はお店のプロのスタッフがやってくれます。焼きあがって完成するまで4週間。どんなふうにできあがるのか、楽しみ♪ 作陶体験が終わると、おいしい飲み物を出してもらえます。ほっとひと息。
陶芸体験を終えて…
憧れていた陶芸が体験できて、それも美大で陶芸を専攻していた陶芸のプロの先生からいろいろ教わることができて、2時間があっという間に感じられました!
「体験されるとみなさん、またやりたくなるようで、リピーターになってくださる方も多いんですよ。最初は、自分で使うアクセサリープレートをつくって、腕を上げていくうちにプレゼント用として誰かのための器をつくったり……」
難しいところは用意してもらっているのに、自分の手を使って土に触れてつくると、自分だけのオリジナルという感じがします。
「世界にたったひとつだけの器がここでつくれます。お友だちの結婚祝いに絵つけコースで作品をつくる方も多いですよ。思いがこもった器が暮らしの中にひとつあるだけでも、なんだかうれしくなりますよね。at kiln AOYAMAでは、働いていてなかなか習い事ができない人に向けて、夜の体験ワークショップもやっているので、西川さんもぜひ、今度はお仕事帰りにいらしてください」