LIKE IT! HAIR CATALOG JP THE ERCOMMENDED Vol.13. Archivando
日常の暮らしの中で使われて輝く
真摯に選ばれた道具たち
HEAVENSのスタイリストNAOさんが「LIKE IT!」に選んだのは、
東京・渋谷にSHOPを構えるArchivando(アルチヴァンド)。
そこで生活道具が美しく並ぶ店舗にお伺いし、オーナーの神谷智之さんに
Archivandoへの思い、またデザインについてお話を聞きました。
飽きのこないデザイン
愛着のもてるアイテム
HEAVENSは原宿と渋谷の両方にサロンがあるので、最近「奥渋谷」と呼ばれているこのあたりのエリアは、僕の生活圏。休みの日やサロンへの行き帰り、自転車で走っているときに見つけたのがArchivandoです。もともと流行り廃りのないデニムなどが好きで、トレンドに流されず、長く愛せるものに惹かれる僕は、すぐにこのお店が気に入りました。
今回、お話を聞かせてくださったのは、店舗設計のデザイナーとして33年間も活躍したあと、長年の夢であった生活道具の店を始めた神谷さん。コンクリート打ちっ放しのシックな店内には、国内外いろいろな、そして、さまざまなプロダクトデザイナーが手がけた生活道具が「まるで初めからここにあるべくしてある」ように並んでいました。
どのような審美眼でモノ選びをしているのか、いいデザインとは何なのか?お店を知ったときから気になっていたことをあれこれ聞いてみました。
神谷智之さん / Archivandoオーナー
家具工房を営む家に生まれ、モノづくりを身近に感じながら育ち、店舗デザイナーとして理美容総合メーカーに就職。20代なかばから30歳までニューヨークとロンドンで勤務。帰国後、日本のバブル景気も経験し、東京でハードワークを続けるなか「良質なものを紹介する場を持ちたい」と10年近く思いをあたため、2013年11月、満を持してArchivandoをオープン。展示会や受注会を精力的に行いながら「つくり手と使い手の出会いの場になること」をめざしている。
「正しいデザイン」
その価値観に基づいたものだけを
フランス・ライヨールのカトラリー、イタリア・サタルニアのお皿、ドイツ・タークのクラシックフライパン、柳宗理のザルやボウル、野田琺瑯の保存容器、ベルギー・サボネリーブリュッセルのナチュラルソープ、英国・ディー・アール・ハリスのリップバーム、日本・MUCUの文具……店内には、国内外の、ありとあらゆる生活道具があって、雑然としていてもおかしくないのに、どれも静かで美しいたたずまいをしていますね。
「長く店舗デザインをしていたので、照明にこだわってはいますが、それはモノが美しく見える手助けをしているだけ。正しいデザインがされているモノは、そこにあるだけで、本来は美しいのだと思います」
正しいデザインとは、どのようなものなのでしょうか?
「そのモノが用途に対して、正しい形をしていて、正しい素材でつくられていて高品質であることが私の考える正しいデザインです。『デザイン』は、ともすると奇抜と思われがちですが、『正しいデザイン』は、たいていの場合、用の美を備え、機能美を持っているので奇抜であることは少なく、シンプルなことのほうが多いように思います。たとえば、うちでオープン当初から扱っている柳宗理のヤカン。このヤカンは、カッコイイからこのフォルムになったわけではなく、底面が広いのは熱効率をよくして、早くお湯を沸かすため。グリップが太めなのは、熱湯を扱うからすべることなく持ちやすくするため。注ぎ口の口径やカーブは、安定してお湯を注ぐため。すべてに意味があります。そして、結果としてグッドデザイン賞を受賞している。聞くところによると、柳宗理は、ヤカンの使い手である料理教室に通う人や主婦の生の声をリサーチしてこのフォルムを生み出したといわれています」
ご自身で使ってみてから、お店に並べるかどうかを決めているのですか?
「さすがにこれだけの商品、すべてを実際に使ってはいませんが、中には長年愛用しているものもありますし、シリーズものであれば、その中の1つか2つを自分で使って、選んだものもあります。また信頼のおける人からすすめられて納得したものも扱っています。ただ、どうしても長く愛せるものを選んでいるため、扱うアイテムが様変わりしないので、期間を定めてシリーズものをフルラインナップで並べるなど、ときどき店内の配置がえをしています」
お客さまは、常連さんが多いのですか?
「常連になってくださる方も大勢いらっしゃいますが、イギリスの雑誌『MONOCLE(モノクル)』が選ぶ世界の小売店トップ25『TOP SMALL ARTISANAL RETAILER』に選ばれたこともあり、海外からの観光客や首都圏在住の外国人のお客さまの来店も多いですね。東京に出張のたびに寄ってくださる方もいます」
人の心と、その人の暮らしを
心地よく変えるもの
店舗デザインから、生活道具のお店へと、“職変え”をしたのは、どんな思いからなのですか?
「もともと実家が家具工房なので、モノづくりの環境が自分にはなじんでいました。店舗デザインといっても前職は、工事現場監督まで行う仕事だったので、それはそれでとてもやりがいがあり、得るものも多かったです。でも、施主から依頼された仕事というのは、どうしても経済的な面での制約もあり、木の板に見えるような人工物で床や壁にハリボテしなければならなかったり……自分の理想とかけ離れてしまうこともありました。そして、本当の心地よさとは何なのだろう?と追求していく中で、空間をつくることと同じくらい、その空間で暮らす人、そしてその人が使うものに興味が動いていったのです」
アクセサリーも扱っているのを今回、初めて知りました。シルバーのリングもバングルもすごくかっこいいですよね!
「TORAIRO(トライロ)というこのブランドのデザイナーは、もともとお客さまとして来店してくれていた知人です。以前はブライダルリングをメインにつくっていたのですが、ここのところ年齢や性別を問わないデザインでつくり始めたので、うちでも並べることにしました。『傷つきいびつになることで完成する自分だけのかたち』をコンセプトにしているので、着用しているとどんどん愛着が湧いてきますよ」
時を経ても
気持ちを動かすモノ
ここに飾ってある袋はなんですか?
「これは、ロンドンで仕事をしていたときに利用していた銀行のものです。この袋に売上金を入れて銀行に持っていっていました。あるとき、古くなって新しい袋にとりかえると言ってきたので、古いほうをもらったのです。帰国してから長らく押入れにしまったままにしていたのですが、お店をオープンする際に、ふと思い出して額装して、ここに飾ることにしました。無駄のないデザインや機能美、そしてビジネスなど、見るたびにさまざまなことを思い出させてくれる袋です」
「お店がオープンして『夢が叶いましたね』といわれることがありますが、まだまだ夢は叶っていません。目標としているのは、良質な生活道具と使う人が正しく出会うこと、そしてそれが広がっていくこと。その架け橋になれるようにこのお店があります。店頭に並ぶモノがどのような背景を持っているのかを知って、そして使っていただけたら、それは素敵な出会いになる。そんなふうに思っています」
神谷さんの審美眼に叶ったモノが並ぶArchivando。4月5日までは、tamaki niime - roots shawl 展を開催中。軽やかでふんわりとやさしい色合いのショールに出会えます。
Archivando
住所:東京都渋谷区神山町41-5
TEL:03-5738-7253
営業時間:13:00~22:00(平日)12:00〜21:00(土日祝)
定休日:水曜日
http://www.archivando.jp/