LIKE IT! HAIR CATALOG JP THE ERCOMMENDED Vol.14. MIYAKE BUTTONS
DaBのスタイリスト阿部寛明さんが「LIKE IT!」に選んだのは、
東京・銀座にSHOPを構えるミタケボタン。
所狭しとボタンの棚が積まれた店舗にお伺いし、オーナーの小堀孝司さんに
ボタンについて、あれこれお話しを聞きました。
ファッションが大好きで毎シーズン、コレクションをチェックしたり、時間があれば表参道のブランドショップを覗いたり……。そんな洋服好きの僕が最近、注目していたのがボタンです。ボリュームは小さいのに、たいてい洋服では一番注目される身頃の中心部についているせいか、侮れないなと思っていたのです。
「銀座にボタン専門店がある」と美容師仲間に教えてもらって、次の休みに行ってみようと思っていました。それがミタケボタンです。
今回、お話を聞かせてくださったのは、日本唯一の「ボタンニスト」であるオーナーの小堀さん。決して大きくはないお店にぎっしりとボタンの引き出しが積まれ、どの引き出しにもいろいろなボタンがおさめられ、さながらボタンの博物館のような雰囲気。
ファッションにとってボタンとはどのようなモノなのか? なぜボタン専門店をやっているのか? 心の動くままにいろいろ質問してみました。
小堀孝司さん
ミタケボタンオーナー
銀座で創業70年を誇るボタン専門店の3代目。幼少期から店を継ぐことを胸に祖父母からボタンにまつわる話を聞いて育つ。2014年銀座2丁目から銀座1丁目に移転。創業時から引き継いだ希少なボタンのほかに、新たにオリジナルボタンの製造も手がけ、国内外のファッションブランドやデザイナーから「なくてはならない店」として信頼を集めている。
一歩店内に足を踏み入れると、そのボタンの種類の多さに圧倒されます。僕は、実はボタン専門店というものを知らなかったのですが、専門店は多く存在するのでしょうか?
「ボタンだけの専門店をご存じなくても無理はありません。今、日本にボタンだけの専門店は、数軒しかないのではないでしょうか。多くのボタン屋さんは、他のものを扱うことでなんとか店を成り立たせていて、手芸品店や雑貨屋さんなどになっていると思います。その手芸品店ですら、昔に比べれば数は少なくなっているはず。ボタンが大量に売れる時代ではないので、ミタケボタンもさまざまな工夫をしながら、本当にボタンを欲している人にきちんと届けられるように頑張っています」
ここには、何種類ぐらいのボタンがあるのでしょう?どのようにして集められているのですか?
「大きさや色の違いまで含めれば1万種類は超えていると思います。その多くは、先々代、先代から引き継いできたもので、1200本の引き出しがある中で新しいボタンが入っているのは20〜30本ぐらいでしょうか。他店ではここまでの量をそろえることができないのでは?と思っています。ミタケボタンには、水牛のボタンだけでも10色ぐらい5サイズほどあるので、それだけでもすごい量です」
ボタンを選ぶというのは、とても楽しいことだと思うのですが、ボタン専門店がほとんどないのは、なぜなのでしょう?
「洋服がオートクチュールで仕立てるものだった時代は、生地やデザイン、着る方の体格や好みなどを反映して、ボタンひとつとっても、こだわって選ばれていました。その後、既製品が当たり前になり、その既製品ですら大量生産になり、今はコストを抑えるためにボタンが必要のないデザイン、もしくは安価なボタンで済むような洋服のつくり方をするようになっています。デザインが先にあってそこからボタンを選ぶのではなく、洋服の価格が先に決まった中でボタンを選ぶ流れになっているので、ボタンがなかったり、安価なボタンを選ばざるをえなかったりしているのが現状なのでしょう。結果的に、ボタンがなかったり、安価なボタンがついている洋服が今の人々には、ファッションと思われるようになっている気がします」
ボタンのない洋服が増えていくとボタンの需要も減っていきますよね。
「このままでは、メイドインジャパンのボタンがなくなってしまうので、ボタンをつくることができる人がいる今のうちに、ボタン工場があるうちに、少しでもその技術がなくなってしまわないようにと思い、オリジナルボタンをつくったりしています。日本のメーカーと共同で昔の製造技術を再現したコート用メタルボタンもつくりました。これは真鍮製で、あえてメッキ加工をしていないので経年変化するのも魅力です」
一見、同じように見える大きさのボタンでも、表情の違うものがいろいろありますね。
「ボタンは洋服をより素敵に見せ、個性を表現するのに欠かせない重要なアイテムだと私は思っています。たとえば、白っぽく見える小さなボタンもプラスチック製と白蝶貝のものでは洋服の上に並んだときにまったく異なった表情になりますし、全体の印象も変わります。べっ甲のボタンだけを見ても、べっ甲は、1ミリほどの甲羅を重ねてプレートを作り、そこからボタンの形に削り出しているので、ひとつひとつ透明感などが異なります。もともとボタンは自然素材のものが多かったのですが、大量生産に応えるためにプラスチック製のものが増えていきました。ボタンと同じような働きをするものにファスナーやスナップなどがありますが、それらは、ほとんどが機械でつくることのできれる機械屋さんの仕事のもの。ボタンは、この小さなひとつひとつに溝をつける、つけないなどから始まり、人間が関わる部分が多く、職人さんの存在がとても大きな意味を持つものです。さらに自然素材のものとなると、なかなか大量生産ができません。洋服メーカーから大量に購入するから安くしろ、と言われても応えられないのです」
美容師に100人お客さまをまかせるから安くしろ、というのと同じですね。受注が多くなっても単価を安くできないですものね。
「日本のボタンの技術でつくることのできるボタンはまだまだたくさんありますが、その技術も使っていないと滅びてしまいます。多くのデザイナーさんがミタケボタンに足を運んでくださるのは、ここに来れば、洋服に合うボタンが見つかるから。PASS THE BATONや伊勢丹でミタケボタンを扱っていただくようになるなど、本当にファッションが好きな方はボタンにこだわる人が多い。これからもそのような人たちが満足するボタンを、この銀座で店を構えながら、提供していけたらと思っています」
ミタケボタン
住所:東京都中央区銀座1-5-1 第3太陽ビル 501
TEL:03-3563-0061
営業時間:10:00〜19:00(平日)、〜18:00(祝)
定休日:日曜日
http://mitakebuttons.com/cms/
オンラインショップ
http://shop.mitakebuttons.com/