LIKE IT! HAIR CATALOG JP THE ERCOMMENDED Vol.15. TOKYO NOBLE
憂鬱な雨の日が「待ち遠しい日」に変わる傘
HEAVENSのスタッフ小林加奈さんが「LIKE IT!」スポットに選んだのは
東京・御徒町にある傘専門店、東京ノーブル。そこで今回は
傘職人によるモノづくりを大切にする東京ノーブルにお伺いして、
「MADE IN JAPAN」の傘についてあれこれお話を聞きました。
実用品として、また
ファッションアイテムとしての傘
傘には実はほろ苦い思い出があります。雨が降るたびに胸の奥がヒリッとするような、そんなせつない経験があるのです。小さいころ、母は私に真っ白な傘を持たせてくれました。今、思うと子どもが持つのだから汚れて当たり前なのに、どうして母が汚れの目立つ白を選んだのかはわかりません。でも私は、大好きな母が白を選んでくれて、雨の日になるとその真っ白な傘をさすのが大好きでした。ところがある日。弟がその大切な傘を汚して壊してしまったのです。
それ以来、長いこと「またあの頃のような気持ちで持てる素敵な傘が欲しい、でもなかなか自分が納得するものに出会えない」そんな思いを抱えていました。そんなとき、傘を大切に使っている人がいて、それが「東京ノーブル」のものだと知りました。
雨の多い日本で暮らしていると傘は実用品であると同時に、ファッションアイテムとして大切なもの。今回は、傘のプロにいろいろお話を聞いてみたいと思ってお伺いしました。
花田靖さん
株式会社イー・ビー・アイ代表取締役
東京ノーブルオーナー
市瀬裕子さん
東京ノーブル店主
もともとアパレルブランドなどの受託製造として国産だけでなく、海外有名ブランドの傘などを手がけてきた株式会社イー・ビー・アイ。1シーズンに何十社、何百型もの傘に触れる中で「国内の職人が持つ技術とその傘を守っていきたい」との思いが湧き上がり、2010年より洋傘のオリジナルブランドとして「東京ノーブル」を設立。ファッションスタイリストから支持を集める機能美を兼ね備えた傘は、テレビドラマ、アーティストのプロモーションビデオなどにも多く登場している。
選ぶ楽しみ、組み合わせの喜びで
世界中で自分だけの大切な1本に
ずらりと並ぶ色とりどりの傘、傘、傘。思わず「何色あるのだろう?」とつぶやいてしまうと、その声を聞いた市瀬さんが答えてくれました。
「77色あります。ただ骨組みは大きく分けて4種類。長傘が2種と折りたたみが2種。本当に使いやすく、本当に必要とされる傘はどんなものだろう?と突き詰めた結果、4種類になりました。とはいえ、無地77色、柄物20~30種の生地、アクリル、合皮巻き、竹、籐、真鍮の持ち手、タッセルを選ぶとその組み合わせは無限大といってもいいほどです」(市瀬さん)
キレイに開き、
キレイにまとまる
1本に職人技術が結集
色やパーツはいろいろなのに、骨組みは4種類なのですね。
「傘は雨の日に開いて使うだけでなく、用がないときはたたみますよね。雨が降ってくればさっと開きたい、そして室内に入るときはさっとたたみたい。スムーズに開いてキレイにコンパクトにたたむには、生地のサイズや張りが大切です。海外で大量生産で作られる傘は、生地を何十枚も重ねて機械で一気に裁断していますが、東京ノーブルの傘は職人が裁断するので重ねる生地の枚数は多くて4枚程度。ズレがほとんど生まれません。それを手作業で丁寧に縫製するので、スムーズにキレイに開いたり、たためたりするのです」(花田さん)
ビニール傘だと雨があたってもいい音が鳴らないけれど、布で雨のあたるいい音が聞けると、なんだか雨の日が楽しくなりますよね。過去に何本かはそういった傘に出会えていたのですが。
「ぽんぽんと太鼓のような音がして水滴をはじくように生地を張るには熟練の技が必要です。職人というと、ついつい伝統工芸品に携わる人ばかりを思い浮かべてしまいますが、日本の傘づくりの現場には、こういったところにもきちんと心を行き届かせる職人がいるんですよ」(市瀬さん)
オールハンドメイドだから
自然と愛着がわく
長傘で長さが異なる2種類があるのは、どのような理由からなのですか?
「長傘はロング60cmとショート50cmの2種類の親骨のデザインがあります。背が高い方は長い傘が持ちやすいですし、背の低い方は短いほうが持ちやすいですよね。そして東京ノーブルでは、先端部分の石突きを身長や持ちやすさに合わせてその場でカットすることも可能です。こうすることで広げたときの傘の大きさはそのままで持ち歩くときの長さを変えることができます。持ち手の部分の長さを変えることで、それこそ長さもその人だけに合った1本にすることができるのです」(市瀬さん)
雨よけの目的だけならば、雨が降り出したときにコンビニに駆け込んでビニール傘を買えば十分だけれど、なんだかそれでは味けないですよね。サロンでも雨の日は受付でお客さまの傘をお預かりするのですが、その傘が素敵だと隅々までおしゃれに気を使っていらっしゃるのが感じられて、なんだかこちらまでうれしくなりますし、自然と丁寧に扱いたくなります。
「ビニール傘がなくなればいいなんて私たちも思っていないんですよ。必要なときはあるでしょう。ただいつも使い捨ての傘で間に合わせの傘で……というのでは、少し寂しい気がしますよね。気負わずに使えて上質な国産傘のブランドをみなさまに少しでも届けたいと思ったのは、雨の日にビニール傘ばかりになってしまった光景を見たこともきっかけです」(花田さん)
今日は、色とりどりの傘に心を奪われて、どれにしようか決められそうにありません(笑)。
「みなさん、悩まれますよ。半日ぐらい滞在していらっしゃった方もいました。長く愛用されている方は、お気に入りが決まっていて、なくすたびに同じものを買いに来てくださいます。そういえば以前、青が好きという方に3人のお友だちがたまたま東京ノーブルの傘をプレゼントした、ということもありました。これだけ種類があるので、3人の方が差し上げたプレゼントの傘は、どれも違うものだったとおっしゃっていました」(市瀬さん)。
本格的な梅雨が始まる前に、どの傘にするか決めたいと思います(笑)。
Tokyo noble(東京ノーブル)
住所:東京都台東区上野5-9-19 2K540 N-3
TEL:03-6803-2414
営業時間:11:00~19:00 ※季節により変動あり
定休日:水曜日
http://www.tokyo-noble.com/