LIKE IT! HAIR CATALOG JP THE ERCOMMENDED Vol.23 People Tree Fair trade
幸せをシェアするというあり方
フェアトレードのピープルツリー
Doubleのスタイリスト外山美紀子さんが「LIKE IT!」アイテムとしてセレクトしたのはピープルツリーのチョコレート。パッケージの可愛さに惹かれて手にして以来、そのおいしさのトリコに。今回は、そのチョコレートを手がけているピープルツリーの自由が丘にあるショップにお邪魔しました。
チョコレート1枚で気軽に
おいしくエシカルライフ
仕事帰りに甘いものが欲しくなって表参道のナチュラルハウスに立ち寄って購入したり、休みの日に渋谷ヒカリエで見つけて手にしたり、友人からプレゼントでもらったり……。最初はパッケージに描かれているイラストが可愛くて手にとったのですが、食べたらおいしくて。なんどか食べているうちに、チョコレートメーカーのチョコレートではないらしいと気がついたんです。よくよくパッケージを読んでみたら「フェアトレード」「ピープルツリー」って書いてあって。どんな会社なんだろう?どんなお店なんだろう?って、気になっていたんです。
今回、お話を聞かせてくださったのは、ピープルツリーを手がけるフェアトレードカンパニー株式会社 広報・啓発担当の鈴木啓美さん。いただいた名刺の肩書きに「広報」だけでなく、「啓発」と書かれているのを見て、さらに興味が増しました。「フェアトレード」ってそもそも何なのか? おいしいチョコレートはどこでつくられているのか? いろいろ教えていただきました。
鈴木啓美さん
フェアトレードカンパニー株式会社 広報・啓発担当
日本発のフェアトレード専門ブランド「ピープルツリー」の広報・啓発担当。小学生のころに「砂糖の価格が暴落してネグロス島が大変!」というテーマの授業を受け「フェアトレード」を知る。通信販売や伝統工芸の会社の広報を経て現職に。フェアトレードを、小難しい面倒なことではなく、ある意味「当たり前」で、「心地いい」ことだと思ってもらえるにはどうしたらいいのか。自身がフェアトレードライフの実践者として、工夫を重ねる日々。
買うときに、ものを通して
「つくり手がいる」ことへ思いを馳せる
——当初、ピープルツリーがチョコレートメーカーだと思っていた私は、ピープルツリー自由が丘店に行ってみて、その商品のバリエーションの豊富さにびっくり。チョコレートはもちろん、洋服、雑貨、いろいろなものが棚に並べられています。ピープルツリーは、何のお店なんですか?
「ピープルツリーは、今から25年前に日本で誕生した、フェアトレードカンパニー株式会社のフェアトレード専門ブランドです。扱っているのは、ライフスタイル全般に関わるもの。外山さんが知ってくださっているようにチョコレートはみなさんに大人気ですが、そのほかにも、ファッションアイテム、インテリア雑貨、食品、書籍……それからウエディングアイテムも扱っています」
——ウエディングアイテムも? ウエディングアイテムって、このドレスがそうですよね。そもそもフェアトレードって何なんですか?
「フェアトレードは、貧困問題と環境問題をビジネスの仕組みで解決しようとする方法のひとつです。経済的・社会的に立場の弱い途上国の人びとの労働力を安く搾取し、利益だけを追求するビジネススタイルではなく、収入の機会をフェアに提供して、フェアなやりとりをすることで、生産者の安全や環境に配慮したものづくりをしています。ピープルツリーは、日本で売れるようにするためのデザインや技術研修の支援をしたり、継続的に注文することを通じて 、持続可能な生産を支えています。ウエディングアイテムも、人気のシリーズなんですよ。ウエディングは、ご結婚するおふたりにとって人生最良の日ですよね。その幸せの日に着用するドレスやお祝いのパーティで使用するもの、また参列者へのギフトなど、さまざまにご用意しています。エシカルウエディングは、結婚パーティに参列する人だけでなく、ドレスや引き出ものをつくっている人たちにも幸せのおすそ分けができます。このエンパイアライン・コットンシルクウエディングドレスは、すべて手作業でつくられていて、胸元とスカートには丁寧で細かい花モチーフの刺繍が施されています。ウエディングドレスって、通常は、普段着にできないような素材を使った一回しか着用しないものですが、このドレスは、コットンシルクでつくられているので、着用したあとリメイクして普段着にされる方が多いんですよ」
——自分が幸せなときにその幸せをおすそ分けすることで、地球の裏側にいる誰かも幸せにできるなんて、素敵ですね。アクセサリーもすごく可愛いものがいっぱいある!
「ピープルツリーのウエディングドレスはすべて、1着お買い上げいただくごとに10,000円をドレスをつくった生産者団体に寄付しています。こうした取り組みが評価されて、今年、ソーシャルプロダクツ賞を受賞しました。また、このインドのネックレスは、児童労働の問題を少しでも解決しようと、100個販売されるごとに30ドルを、子どもに教育の機会を提供する教育センターに送っています。ビーズもガラスを火であぶってひとつひとつつくっているので、味わいがあって可愛らしいですよね」
「ファストファッションを選ばないお買い物方法」が
世界を少しずつ、変えていくかもしれない
——洋服を買うと、タグに途上国の名前がプリントされているので、どんな服を買っても途上国の人々に仕事が提供できているように思っていたのですが。
「ファストファッションの生産現場は、外山さんがおっしゃるように途上国にたくさんあります。ただ、ファストファッションのメーカーは、コストを抑えるために、人件費や安全対策費を削ります。効率を最優先するので、袖をミシンで縫う人は、袖ばかりを縫うのです。何をつくっているのかは、わからない。そうすると、その日の労働分の賃金は入ってきますが技術は育っていきません。技術がないと転職すらできないのです。もちろん貧しい暮らしの中で、目の前の賃金は大切なものです。ただそれだけで終わってしまうと、労働力として搾り取られておしまいです。ピープルツリーでは、日本のマーケットに合ったデザインを現地の生産者さんと相談しながら決めて、技術提供も同時に行いながら、それぞれのアイテムをつくっています。一方で、手織り、手刺しゅう、草木染め、手編み、ブロックプリントなど、その土地の伝統技術を生かした手仕事も積極的に採用するようにしています」
——新しい技術を身につけつつ、昔からある技法も継承していく。なんだか美容師と通じる気がします。手仕事のアイテムって高価なイメージがあったのですが、ピープルツリーに並んでいるものは、ファッションのセレクトショップに並んでいるものより安いものも多いんですね。
「フェアトレードのアイテムは、ファストファッションのアイテムと比べると高いかもしれませんが、つくり手が生活できて、日本でも売れる価格帯になるよう、話し合いで決めています。このネパールのレース編みのカーディガンは、総手編み。ピープルツリーで扱う洋服の中では高価な部類で2万円台です。この生産者団体は、家族の住む場所を離れないでいいやり方でつくっています。途上国は都市部と村の差が激しく、多くの人々は現金を稼ぐために都市部や外国に出稼ぎに出ているのですが、それだと人生の大切な時期のほとんどを家族と離れて暮らすことになってしまいます。お金は得られたとしても、それは本当に幸せなのか? ピープルツリーではそこまで踏み込んで、家族と暮らす土地から離れないで収入を得られる手仕事を生かしたものづくりをサポートしています」
——鈴木さんから説明を聞くと、そうか、途上国の人々の手仕事でつくられたものなのだな、と思うけれど、パッと見た目は、本当にただ可愛いアイテムですよね
「それでいいんです。可愛いと思って気に入って、楽しんで生活に取り入れていただけたらと思っています。可愛いと思って選んだものがたまたまフェアトレードのものだった。素敵だなと思って購入したものがつくり手をサポートしたり、環境に配慮しているものだった。お買い物を楽しみながら、よりよい未来をサポートできる、そんな選択肢がたくさんある世の中になっていけばいいなと思っています」
ピープルツリー 自由が丘店
住所:東京都目黒区自由が丘3-7-2
TEL:03-5701-3361
営業時間:11:00 ~ 20:00
定休日:年末年始を除き、年中無休
http://www.peopletree.co.jp