モノクロームな女たち Editor's Note October. 2018
彼女たちのことを思い出すとき、決まってモノクロームのイメージが浮かんでくる。
#1 向かいの窓の女
午前5時、いつも閉めきられているカーテンが開き彼女が現れた。 たった今起きてきたようでもあれば、たった今帰ってきたようでもある。 互いに不思議と驚くこともなく、小さく会釈を交わしたのだった。
#2 古着を愛する女
少しダメージのあるジャケットを羽織った彼女は、同い年の私よりもはるかに大人に見えた。その服のかつての持ち主たちの人生を、自分のものにしているかのように。
#3 ショーに生きる女
どこにいたってスポットライトを浴びているように見える。人は彼女のことをそう評していた。「どおりで。私も目覚めた瞬間ライトが見えるの。」彼女は真面目な顔でそう言ったので、ジョークだったのどうかはわからない。
#4 ラジオで目覚める女
彼女の部屋は殺風景だったが、古めかしい真空管ラジオが不思議な存在感を放っていた。玄関を出て、道端のハチワレ猫にわっと飛びついたと思ったら、急に射るような目をしてこっちを見つめている。
#5 傘をささない女
彼女は雨の中を、傘もささずに優雅に歩く。まるで楽しんでいるかのように。週に1日だけ、いつもの帰り道とは逆の方向に消えるらしい。