彼女の本棚 Editor’s Note November. 2018
ソファに腰掛け視線を上げると、急に本棚が迫るように見えてきた。そうだ、あの本は読みかけ、あれは借りっぱなし、そっちは買ったまま・・・。ページを開くのなら、それは今日ってことか。
NIKAIDO KIYOMI
- 「古道具中野商店」作者:川上弘美
- 中野商店を舞台に繰り広げられる恋と友情、人間模様を描いたストーリー。
登場するキャラクターがとにかく魅力的で、いっきに読んでしまいました。
読み終えた後はほっこりした気分になります。 - 「悲しみよこんにちは」作者:フランソワーズ・サガン
- 17歳の少女が自分の父親の再婚相手を追い出そうとするお話。
追い出すために企んだ計画が思いも寄らない結末を招いてしまいます。
人の危うさやもろさが美しく描かれていて、切なくも心に残る作品です。 - 「私のマトカ」作者:片桐はいり
- 北欧の旅のエッセイ。クスッっと笑えるところもあり、
疲れた時にサクッと読めて元気がもらえる1冊。
UCHIDA YUMI
- 「浴室」作者:ジャン=フィリップ・トゥーサン
- 1985年、著者が28歳の時に出版された処女作。
浴室で午後を過ごすうちに、いつの間にかそこで暮らすようになってしまった男性のお話し。
母親や恋人に説得されても浴室を抜け出せない主人公。
このままではダメだと気付き、出てはみるものの気がつくとまた戻っている・・・
時代を超えて読み続けられていて、いつまでも新しさが失われない1冊。 - 「クロワッサンとベレー帽」作者:鹿島 茂
- 私たちの周りにあるフランス的な物、場所、食べ物にまつわる小話が満載の作品。
フランス人に愛されたフランスの品々のエピソードを読んでいると、
フランス人のことを理解できるようで楽しい1冊です。 - 「夜の紅茶」作者:江藤 淳
- 夏目漱石の評論家としても有名な江藤淳さんの随筆。
夕食の後、ひと眠りしてから紅茶を飲むのが好きだという江藤さんの気持ちがよくわかる気がする作品です。
人とは違った視点で物事を見ていて、遠い音楽に耳を澄ますようの気持ちで書いているという文章は、
リズミカルでとても心地よいです。
YAMAMOTO MARIKO
- 「こころ」作者:夏目 漱石
- 学生時代に読んだ、夏目漱石の「こころ」。
「私」という主人公と「先生」が出会い、はじまるストーリー。
先生の過去を巡り、ふたりの物語は先生の一生を終えるまで続く。
人は色々な事を抱えて生きているのだと深く考える作品です。
ふたりの間に交差する深い深い感情の表現が若い頃の自分に突き刺さりました。 - 「ふくわらい」作者:西 加奈子
- 愛情、友情を知らない不器用な主人公の女性。そんな彼女が出会う盲目の男性。
この出会いがその後の彼女を変えていくことになる。他の目をも気にしないラストシーンに感動させられます。 - 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」作者:村上 春樹
- 主人公が高校時代の友人を訪ね、過去を振り返っていく物語。
主人公以外の登場人物の名前には必ず色が入っていて、
タイトル通りの色彩を持たないのが主人公の多崎つくるのみ。
春樹節炸裂の作品です。