小松 今、僕らの業界の若い人たちに「音楽とファッションとヘアスタイルはつながっているんだよ」って言っても、「え? 音楽ですか??」って言う人が多いかな。ファッションだけに関していうと、それこそミュージシャンがファッションデザイナーになったりするから、まだ関係性として理解されやすいけれど、音楽とヘアスタイルとなると、理解されにくい。それって、音楽を感じるヘアスタイルが少ないってことだと思うんだよね。バックボーンがないというか……。ヴィダル・サスーンだって、60年代のスウィンギング・ロンドン(注1)そのものだし。ヘアスタイルって音楽から入っていたと思うんだよね。ツーブロックもドレッドもリーゼントも全部、音楽というバックグラウンド、バックボーンがあったんですけどね。
ピーター そうですよね。まさに、ロックンロールはリーゼントみたいなところがあって、ビートルズはマッシュルーム……。
山下 ビートルズも最初はリーゼントでしたよね。
ピーター そうそう。そうでしたね! 革ジャン着てリーゼントで。
小松 最初はあんなお行儀のよさそうな感じじゃなかったけど(笑)。当時は、音楽や映画などがファッションとヘアスタイルと結びついていて、そこにカルチャーを感じることができたんですよね。今の時代の女のコたちのヘアスタイルを見ていると、そういうものを感じないことが多いけど……。
山下 うんうん。僕も映画の中に出てくる女のコの髪型とかをイメージソースにしてヘアスタイルをつくっていたな。
小松 フランス映画とかね。いっぱいありましたよね、いいイメージソースが。ブリジット・バルドーとか。そういうアイコン的な人の何かを取り入れてみるとか、それだけでもいいんだけど。でも、今は、セレブって呼ばれる人の種類も変わってきているもんなぁ。
ピーター そうですね。昔はセレブって呼ばれる人たちの定義って何かの才能があってセレブとして認知されていたけれど、今はセレブの定義が「有名であることで有名」に変わってきている。そこにはちょっと違和感を感じるんですよね。
小松 あるある。そういうのありますね。
山下 ピーターさんからは、今の日本人の女のコのヘアスタイルってどう見えていますか?
ピーター 今は、流行のない時代ですからね。なんでもいいとは思うんですけど、ただ、「まわりがこういうヘアスタイルにしているから私もこうする」という人が多い気もしますよね。「似合うってなんだろう」っていうことをもっと見極めてほしいと思いますよね。そういう意味では、あまりヘアスタイルが似合っている人って多くないように見受けられますね。
山下 美容師がそれを量産しているんでしょうね(笑)。
小松 うん、「まわりがやっているから」っていう判断でヘアスタイルを表現している人は多いかもね。それよりも「似合っているか」っていう、そこを本当は大事にしてほしいんだけど……。もちろん、僕らも明確な基準があるわけじゃない。でも、量産することよりも自分基準を大事にしてほしいとは思いますよね。
ピーター なんでもいいと思うんですよ。似合えば。でも、そうではなくてまわりと同じ格好をして、思考停止のような感じになっている人は多いのかもしれないですね。