山下 こんな日本だと、ピーターさん、好きな音楽もヘアサロンもないんじゃないですか?
ピーター いやいや、ありますよ(笑)。10月に恵比寿で「Peter Barakan’s LIVE MAGIC!」というフェスをやるんです。海外からもミュージシャンを招きますが、日本のミュージシャンでは、濱口祐自というギタリストにもライブをやってもらいます。彼は和歌山の那智勝浦の出身で、58歳にしてデビューアルバム『Yuji Hamaguchi from KatsuUra』を発表したんですよ。日本のミュージシャンは、なぜか国内で人気が出る人は海外で評価されなくて、海外で 評価される人は国内で誰も知らないことが多いんですよね。濱口さんのほかには、Black Waxという、宮古島発の新進ファンクバンドも招いています。
山下 この濱口さんって方の音、いいですねぇ。こういう音楽をやる人たちが売れるといいですよね。
ピーター うん。でもやっぱりいい音楽をやるのと売れるのとは別なんですよね。でも僕はいつも、いい音楽を知ってほしいと思っています。
小松 音楽シーンもスポンサーのご都合があって、本当にいいものかどうかは見えにくくなっているかもしれないけれど、せめて僕らが関わっている美容は、「これが本当にいいでしょ!」ってやつを勇気を持って、情熱を持って、世の中に送り出していかなきゃね。
山下 ところで、ピーターさんって、ふだん美容師との接点って、どんな感じですか?
ピーター 自分がいつも通っているサロンの美容師さんとぐらいしか接点ってないんですよね。長い間、同じ方に切っていただいていたんですけれど、去年の8月にその方が引退してしまって…。
山下 引退?
ピーター もうすでに70代になっていらっしゃったんですけれど、サロンの建物を買いたいという方が現れて、年齢も年齢だし、ということでお店を閉じて引退することにしたようです。
小松 70代というと、かなり長く現役でいらしたんですね。
ピーター 僕はその方に10年ぐらい切ってもらっていたんですよ。
山下 僕らも70まで、できるかな?(笑)
小松 頑張りましょうか(笑)。
山下 でも濱口祐自さんが58歳からのデビューで、僕らより、上でしょ? 僕も50になって「あ、まだまだ上手になれる」って感じているから、大丈夫かもしれないな(笑)。
小松 うん。自分自身の技術は常に1ミリずつでも伸びていかないと、自分の中で新鮮でいられなくなるから、僕らに引退とか安泰なんて、そういう感覚はない、ない。
ピーター 緊張感を持続させていれば、大丈夫。僕もずっと、いい音楽を伝え続けていきたいと思っていますから。