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わかり合うために、伝えるために
摩擦のあるコミュニケーションを

安藤 赤松さんの「ロックが足りない」で思い出したんですけれど、この間、友人が高知に来たんです。高知って独特で、たとえば、スーツをビシッと決めてハワイに行っても、5分でスーツを脱いでアロハシャツに着替えたくなりますよね。周囲がみんなアロハシャツであわてる、みたいな(笑)。

赤松 うちのスタッフにハワイにパリッとした格好で行って、本当にそういう思いをした人がいますよ(笑)。

安藤 高知の土地を踏み、空気にふれていくうちに、「あ、ここでは気楽でいていいんだ」って気づくんですよ。ほっとするみたいな。そういう場所。ある意味、みんな崩壊しちゃう(笑)。それまでは、東京で「打ち合わせはホテルのラウンジで」なんて言いながらノートパソコンを抱えて颯爽としていたような人が、高知に来ると崩壊する(笑)。

赤松 高知って人をゆるませる気がある土地なのかもしれないですね。

安藤 みんな訪れるたびに、タマネギの皮がむけるように本質がむき出しになってくる。シラフなのに、心身ともに開放的になるスイッチが入るようなんですよね。表現としては品がよろしくないかもしれないけれど、フルチンになれるってロックだなって(笑)。

赤松 みんな見えない常識という空気に自分から縛られに行っているようなところがありますよね。

安藤 そうそう。それに、よく「時間がない、時間がない」って口にするでしょ?

赤松 言う! 言い訳でしょって私は思ってしまうけれど。

安藤 「忙しくて時間がない」「時間がないからできない」って言っているけれど、今日も24時間“ある”。そして今日が終わっても明日が来る。明後日も来る。たとえ死んだとしても、明日も明後日も“時間”は存在している。だから、その言い方は、時間に失礼じゃないかーってよく思うんです。

赤松 本当にそう。

安藤 正解? 答え? 知るか!と(笑)。

赤松 ロックですね。

安藤 たまに俳優コースのワークショップをやることがあるんですが、昔だったら役者志望の方ばかりだったのが、最近はバイト先で「いらっしゃいませ」が言えないようなコが参加したりも。なので、自己解放のために、人目を気にせずに大声でセリフを言いながら歩いてもらったり。

赤松 うわ〜。それはすごい。みんな抵抗がありそう。

安藤 皇居を一周するくらい続けると、人格が一度崩壊するんです。いい意味でどうでもよくなることって、大切だなって思っていて。

赤松 面白い! 

安藤 男性なら、女性にへし折られるような恋愛をいっぱいすれば鍛えられるのにって思いますけど(笑)。

赤松 本当にそう思う。

安藤 昨今、男子は追いかけなさすぎなのかも。女性って意外と、100回ぐらいアタックされると、その強い気持ちに惹かれ始めたりしますよね。その努力が見たかったり。

編集部 高校のときに同じ女のコに5回振られたのですが、高校を卒業して1年たってから、つきあってくれたことがあるんですよ。

赤松 その話、いいね!

安藤 追いかけなくなったのは、人間関係の摩擦が怖いからなんじゃないかな。

赤松 今みたいなコミュニケーションの取り方になってきたのは、きっとパソコンとかネットが普及してからですよ。

安藤 自分から何か発言して、思いどおりのものが返ってこなかったり、接触することで傷つくことが怖いのかも。摩擦恐怖症なんじゃないかな。議論を素直にすることで、摩擦することで、最終的に理解しあうことが人間のコミュニケーションなのに、それを避けているように感じます。

赤松 うん。避けている人が多い。

安藤 一方で、摩擦のある相互理解のコミュニケーションに、魅力と憧れを抱いていることも確か。誰だって人知れず寂しい思いを感じることはあると思うから。だから、こっちからガンガンいくっていう手はありですよね。

赤松 そうそう。ガチなコミュニケーションの経験をしたことがないだけかもしれないから。ガンガンやっていると相手に響くなっていうのを感じますね。

安藤 スイッチが見つかると早い。

赤松 そうそう。「今の若いコは」って昔からそんなフレーズで言うけれど、実は、飛び込んでいけば同じだったりする。

安藤 大いに共感!

5月22日up 最終回へと続く

プロフィール

右)安藤 桃子 MOMOKO  ANDO
1982年東京都生まれ。映画監督。小説家。高校時代からイギリスに留学、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業。その後ニューヨーク大学で映画づくりを学び、監督助手として働く。2010年4月、監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』が、ロンドンのICA(インスティチュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京で同時公開され、その他多数の海外映画祭に出品、国内外で高い評価を得る。2011年に幻冬舎から初の書き下ろし長編小説『0.5ミリ』を刊行。現在、文庫版が幻冬舎から発売中。また、同作を自ら監督した映画『0.5ミリ』が2014年11月8日に公開し、現在も全国公開中。また、毎日映画コンクールでは脚本賞、その他の映画賞では作品賞、監督賞など日本の映画賞の数々を受賞した。
左)赤松 美和 MIWA  AKAMATSU
VeLO ディレクター。大学時代にバックパッカーとして海外をひとり旅したときの経験から、言葉以外の手段によるコミュニケーションツールを求めて美容師になることを決意。ハサミを通じてのゲストとのコミュニケーションをライフワークとする。2003年原宿に鳥羽直泰氏とともにヘアサロン「VeLO」をオープン。2009年同じく原宿にヘアサロン「vetica」をオープン。現在、VeLO ディレクターとしてサロンワークを中心に、雑誌の撮影、セミナー、ヘアショーなどで活動。2015年4月、2店舗同時移転リニューアル。“大人が集う原宿“でヘアを通じて「日常を素敵に。」という思いを発信中。

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