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飛び降りる覚悟がない人に
飛び立つ権利はない

赤松 「0.5ミリ」、実は、HAIR CATALOG.JPの編集長の誕生日に、編集長と観に行ったんです。

安藤 うれしい!! 

編集部 誕生日に観るべき映画ですよね。

赤松 うん。編集長は、だいたい、いろんなことに文句から入るタイプなんですけれど、映画を観終わった瞬間に「過去最高かも」って言っていましたもん(笑)。

編集部 赤松さんも安藤監督に熱烈に会いたいとおっしゃっていましたが、編集部としても安藤監督にご登場いただきたいと思っていたのです。安藤監督がお父さまの奥田瑛二さんに言われた言葉にも感銘を受けていて。

安藤 父の言葉ですか?

赤松 奥田さんが桃子さんに「自分が発信するものに対しては覚悟が必要だ」ということを説くために「飛び降りる覚悟がない人に飛び立つ権利はない」とおっしゃったという、あの言葉です。

安藤 ああ! それですね。そういうことを言う父親なんです(笑)。

編集部 鹿児島に「泣こかい跳ぼかい泣こよっかひっとべ」という遊び歌の言葉があるんです。それととても似ていますよね。泣こうか、跳ぼうか、泣くより思いきり跳んでみようという意味で、果敢に立ち向かいなさいという教えが遊び歌の中にあるんです。

安藤 一緒だ~。

赤松 何かを生み出したいなら、覚悟が必要ですよね。

安藤 うん。肚をくくらないと得られないものは絶対あると思います。

赤松 「0.5ミリ」は、桃子さんが肚をくくった先に生み出したものという感じがすごくします。高知では特設会場で上映していたとか?

安藤 そうなんです。これまでテント芝居のような形式での映画上映会などはあったのですが、県と市の協力のもと、がっつりシステムを組んで、公園に特設会場を設けて上映しました。仮設で、しかも公園で劇場公開、ロングランしたのは全国で初めてです。自主上映とはまた違う形で、興行収入が得られる自社配給が実現したのです。

 

赤松 それはすごい快挙ですね!

安藤 そうなんですよ。公園には公園の法律があって、いろいろな制約があるんです。そこを地道に交渉して風穴をあけることができました。地味に革命を起こしました(笑)。

赤松 高知でできたのなら、他の地域でもできる可能性が生まれたっていうことですよね?

安藤 そうですね。民間が訴えることに対して行政は無視できないという関係があるから、今回の特設劇場はいい前例になったんじゃないかな。

赤松 桃子さんは今、高知に住んでいらっしゃるし、映画の撮影も高知で行われましたけれど、高知を選んだ理由は何ですか?

安藤 映画の原作小説を書いているときは、想像上の町だったんです。でも、ここでまた父が登場するんですけれど(笑)、「おまえが書いている街は高知だ!」と、高知を訪れた父が興奮して言うもんだから、ならば!と行ってみたら、どんぴしゃ!

赤松 さすが、お父さま!

安藤 高知は、これまでに感じたことのない日差しで、光の粒子が大きく見えたんです。フィルムに似ているというか。記憶に残る景色が見える。徳島から高知に入ってくると余計に光の違いがわかるんですよ。最初、自分の目がおかしいのか?と思ったくらいでした。

赤松 光の粒子に導かれるなんて素敵ですね。

安藤 今度、高知の中で、山側に引っ越そうと思っているんですけれど、そこを選んだ理由も光の粒子が魅力的だからなんです。キラッキラ!ですよ。

赤松 自分の目で見てみたい!

安藤 来てください、高知。駅に降り立った途端、「何しゆうが?」「どっから来たの?」って地元の人に声かけられますよ、きっと。

赤松 それは、楽しそう!

安藤 みんなね、高知では知らない人に声かけられるよって言うと、「嘘でしょ?」って反応するんですけど、本当なんです。

赤松 素直で嘘のない人たちがいっぱいいる気がする。

安藤 そうなんです。都会だと、似合っていなくても「似合っていますよ」っていう人が多いかもしれないけど(苦笑)。

赤松 でも、どこででも、人の言葉の嘘っぽさって伝わると思う。思っていないことを言ったときもバレる。なんでもかんでも思っていないことを言っちゃうタイプの人がいるけれど、私は、お客さまに媚びへつらって嘘を言うぐらいなら、お客さまは神さまじゃなくて、対等でいいと思っているんですよ。いつもの私で接する。それでオッケーな人とは長くつきあえる。うちのサロンがある原宿や青山界隈は、美容業界では特殊な場所で、かっこいいものを提供したいということはもちろんあるけれど、原宿の地域密着店でもあるのです。気取らずに、素のままの人と人として、ずっと髪を介してコミュニケーションをとっていければって。

安藤 そんな姿勢の赤松さん、絶対、高知、合います! ぜひ、来てくださいね。

赤松 行きます!

プロフィール

右)安藤 桃子 MOMOKO  ANDO
1982年東京都生まれ。映画監督。小説家。高校時代からイギリスに留学、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業。その後ニューヨーク大学で映画づくりを学び、監督助手として働く。2010年4月、監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』が、ロンドンのICA(インスティチュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京で同時公開され、その他多数の海外映画祭に出品、国内外で高い評価を得る。2011年に幻冬舎から初の書き下ろし長編小説『0.5ミリ』を刊行。現在、文庫版が幻冬舎から発売中。また、同作を自ら監督した映画『0.5ミリ』が2014年11月8日に公開し、現在も全国公開中。また、毎日映画コンクールでは脚本賞、その他の映画賞では作品賞、監督賞など日本の映画賞の数々を受賞した。
左)赤松 美和 MIWA  AKAMATSU
VeLO ディレクター。大学時代にバックパッカーとして海外をひとり旅したときの経験から、言葉以外の手段によるコミュニケーションツールを求めて美容師になることを決意。ハサミを通じてのゲストとのコミュニケーションをライフワークとする。2003年原宿に鳥羽直泰氏とともにヘアサロン「VeLO」をオープン。2009年同じく原宿にヘアサロン「vetica」をオープン。現在、VeLO ディレクターとしてサロンワークを中心に、雑誌の撮影、セミナー、ヘアショーなどで活動。2015年4月、2店舗同時移転リニューアル。“大人が集う原宿“でヘアを通じて「日常を素敵に。」という思いを発信中。

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