山田 新しいことを提供するには、自分の中にも引き出しがなくちゃいけない。だから、新しいものを求められるのは、美容師にとって、とっても素敵なことなんだよね。求められれば、必死になって引き出しをつくるし、引き出しの中が空っぽっていうわけにはいかなくなるし。
近藤 私はプライベートでDJをやっているときも仕事でアートディレクターをやっているときも、そういう感覚がある。自分が楽しみながら、何か新しいことを提供したいって思っているから。
山田 DJの麻由ちゃんも素敵だし、お客さまとしても私にとっては大切な存在だけれど、今の麻由ちゃんの本業がアートディレクターっていうのも、素敵だし、おもしろいよね。
近藤 千恵さんは、プライベートでも、私の節目節目に、一緒に食事をする機会をつくってくれるよね。
山田 そうだっけ? 節目ってことを意識したことはなかったけれど、プライベートでも食事をするのって楽しいよね。毎週のように会うわけではないけれど、それこそ過去を振り返ると、サロン以外で会わない時期もあったりするけれど、なんだろうね。ときどき会って食事して、大人になってからはお酒を一緒に飲んで(笑)。
近藤 大学を卒業して出版社に勤めていたころは、とにかく忙しくて忙しくて。編集から入って途中からレイアウトなどのデザインをやっていたのですが、雑誌づくりって当たり前だけどすごく細かいし、今と違って写真がフィルムの時代だから、セレクトもレイアウトも今みたいにPC上でやるんじゃなくて、切って、貼ってだから作業は膨大だった。
山田 うん、うん。本当、ハタから見ていても、いつも忙しそうだったね。
近藤 学生のとき『High Fashion』の読者だった縁でインターンとしてアルバイトから入った出版業界だったから、憧れはあったけれど、本当の意味で仕事の中身を知ったのは会社に入ってからなんですよね。
山田 私は、そのころぐらいからかな? 麻由ちゃんに「作品撮りしたいんだけど、いいカメラマン知らない?」とか「スタイリングを誰かに頼みたいんだけどいい人いる?」って聞いたりしていたよね?
近藤 そうですね、5年勤めた出版社を辞めてフリーになったあたりくらいかな。一緒に仕事をしているクリエイターを紹介したり。
山田 不思議だよね。お客さまと美容師っていう関係だけじゃなくなっていって……。
近藤 フリーランスになるかどうかのときも、千恵さんは一緒に食事をしてくれて作品を見てくれたの。
山田 そうだったっけ?(笑)
近藤 千恵さんのいいところは、そういうところで、 真剣に考えてくれつつ、さらりと受け止めて、でも的確な意見を言ってくれるの。
山田 私、たぶんそのとき「大丈夫だよ」って伝えたんじゃないかな?
近藤 そうでしたよ。